プロジェクトで作成するドキュメントは、メンバーが増え、時間が経つと急激に増えていく。ドキュメント管理規定があっても、周知徹底は意外に難しい。シンプルなルールを定めた上でチームの裁量を認め、ドキュメント管理の要所をPMOが握るようにするとよい。
高橋信也
マネジメントソリューションズ 代表取締役
「9月3日の役員プレゼンで使った資料はどこにあるの?」
「8月27日の進捗会議の議事録はどこにいれた?」
「プロジェクトの共有フォルダの構成がぐちゃぐちゃじゃない! 何がどこにあるのか分からないから、分かるように整理してよ!」
このようにプロジェクトマネジャから突然言われても、一度始まってしまったドキュメント管理の混乱は一朝一夕に収まるものではありません。
“魔窟”と化したドキュメント・フォルダには、手を付けたくない
本来、プロジェクトで作成する膨大なドキュメントは、ドキュメント管理規定に基づいて分類・管理されていなければなりません。しかし、「ドキュメント管理規定に書いてあるフォルダ構成やファイル名を守っていないメンバーが悪いんじゃないか」と思い、ずるずると無統制な状態を続けていることが実情なのではないでしょうか。筆者もプロジェクトの中盤でPMOとして参画した場合に、この問題をよく見かけます。正直、腫れ物に触るがごとく、あまり手を付けたくないと思ってしまいます。
ドキュメント管理規定を作成したとしても、運用するにつれ、実態に合わなくなってしまうことがよく起こります。その原因はいろいろです。当初想定していたフォルダ構成では足りなくなったりすることもあれば、中間的な成果物を管理するフォルダが増えたりすることもあります。また、体制が変更されたため、そもそもチーム名が変わってしまうなど、プロジェクトの多様な変化の中で規定そのものの順守が難しくなったりしてしまいます。
自分で作業をしているファイルにもかかわらず、それらがどこに行ったか分からなくなることも、意外にあるものです。それほどドキュメント管理は難しいと言えるでしょう。ドキュメントを整理するためにグルーピングするフォルダを作っていくのですが、フォルダの階層が深くなりすぎ、まさに魔窟の状態になります。最近はGoogleデスクトップという便利な検索ツールがあるので、自分のパソコン上であれば探せないことはありませんが、プロジェクトで共有しているファイルだと無駄な検索時間を使ってしまいます。
ファイル管理用のツールを導入することも対策の1つだとは思います。しかし、そもそも莫大に増える電子ファイルを運用するのはプロジェクト管理上の問題です。ツールだけで解決できる問題ではありません。
ドキュメント管理、5つのポイント
筆者はさまざまなドキュメント管理を見てきた経験上、以下の5つのポイントを踏まえた運用が重要だと考えます。
(1)プロジェクト共有フォルダと各チームのワーキング・フォルダを分ける
(2)プロジェクト共有フォルダへの格納ルールをドキュメント管理規定に盛り込む(何をどのタイミングで格納するのか)
(3)各チームのワーキング・フォルダは各チームの運用に任せる
(4)プロジェクト共有フォルダのフォルダ構成および作成はPMOが行う
(5)フェーズごとに新しいフォルダを切り、必要なファイルだけ移行する
プロジェクト管理全般に言えることですが、規定は細かすぎたり、複雑であればあるほど運用に耐えられず、結局手戻りが発生し、すべてを見直す羽目になります。
最近は情報セキュリティも厳しくなってきていますので、セキュリティ上の細かな規定を順守することは義務であり、徹底しやすいかもしれません。しかしながら、守っても守らなくてもよいルールはなかなか運用がうまくいかないものです。そのためにもルールをシンプルにし、ある程度の裁量をチームに持たせ、プロジェクト管理上しっかり握るべきところをPMOが握っておく、という点が非常に重要だと考えます。
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