■中小ソフトハウスの経営者・経営陣の皆様に成長の壁を突破する方法をお話する第10回目は、業績不振に伸び悩む中小ソフトハウスがすぐに実行すべき業績向上の“ツボ”についてお話させて頂きます。

(長島 淳治=船井総合研究所 戦略コンサルティング部)



「長島さん、新たな展開としてWeb事業を考えています」
「実は、内部統制関連ビジネスに進出しようと思いまして・・・」

成長の壁にぶつかっている経営者は、現状から脱却するために新たな事業を展開しようと考えてしまいます。ところが、これが面白いように上手く進まないのです。

もともと新規事業というのは、10%以下の確率と考えた方がよく、実際には失敗するケースがほとんどなのです。

そこで今回は「これか!業績向上のつぼ!」という内容についてお届けします。

時流適応は成長企業のポイントだけど・・・

船井総研のマーケティングの原理・原則として「時流適応力相応一番主義」という言葉があります。この言葉に含まれている“時流”というキーワードが重要です。時流と流行の違いって分かりますか。流行とは半年から1年で消えてしまうものです。時流とは、3年から5年という長期のスパンで続くものです。それぞれに期間の違いがあります。

多くの会社は流行適応をしているのですが、時流適応ができていません。例えばWeb2.0という言葉。この言葉が表す本質を、私はWebによるITのサービス事業化だととらえていますが、明らかにWeb2.0そのものは流行でした。ところが、「Web2.0事業部」なる部署が雨後のタケノコのように出てきたのは、記憶に新しいことだと思います。

大切なのは、時流を正確に読み取ることです。例えば、今を表す時流には、どんな言葉があると思いますか。少子高齢化、二極化、グローバル化、ボーダレス化・・・・。こういった言葉から、今の自社のビジネスモデルを考えると何を変化させる必要があるのか、そういった視点が大切になってきます。

「そうか。時流に適応できれば、新たな挑戦をしても良いのか!」

こう思った方は少し待って下さい。時流適応力相応一番化法を実践してよい企業には、当然ながら条件があります。その条件とは何でしょう。ここからは少し非科学的な感じがすると思いますが、最後までお読み下さい。

この手法を採用してもよい企業の条件とはたった一つ。「ツキのある企業」であることです。船井流ではこれを“ツキの原理”と呼んでいます。ツキのある状態とは、単純に業績が向上しているというのが指標となります。

つまり昨対成長がマイナスでは無い、赤字企業ではないということです。船井総研ではツキはコントロールできると考えています。私がご支援をする会社やご相談を受ける会社は、このツキを失っている企業が多いのです。

それでは、ツキを落としている企業を活性化するための業績向上のための方法はあるのでしょうか。

ツキの原理と長所伸展法

ソフトハウスの経営者とお話する時に、お伺いするのはツキの原理を基本としたその会社の長所です。ツキの原理とは主に3つの要素から成り立っています。「伸びている・自信がある・効率的である」という3要素のうち、2つを満たす領域やサービスや商品が、その会社にとってのツキのある分野となります。

伸びているとは成長率を表します。昨対成長率で110%を超えている分野があれば、それは自社にとって重要な領域となります。

次に自信があること。これは経営者や実施担当責任者がその分野には絶対の自信があると強く感じている分野となります。

最後に効率的であること。その領域だけなぜか利益率が高いとか、なぜか受注期間が短いという自社にとって効率性のある分野です。私はいつも、この伸びていると効率的を中心にソフトハウスを分析することにしています。

船井総研の経営の原理・原則では、まずツキを落としている会社にはツキを取り戻すことが必要だとしています。そして、そのツキを取り戻す手法として、新たな事業分野への進出をしてはいけないとします。

つまり、現状の力の中でツキのある分野を探し出し、まずは業績そのものを短期的に回復させることに注力するのです。そして収益そのものが改善した後に、時流適応で力相応で一番になれる領域を開拓していきます。多くの会社が賭け事のように新たな領域に活路を見出そうとしますが、それは優先順位的に間違っています。

まずは先ほどお話した様に、ツキの原理に基づいて自社を分析して下さい。これはマクロからミクロへ、またあらゆる切り口について角度を変えて分析して下さい。これにより、現状でツキのある言語、ツキのある業務領域、ツキのあるお客様が見えてきます。

そして、ツキのある分野を特定できれば、今度は長所伸展法を活用します。まずはそのツキのある分野の山をさらに高くするために、経営資源を投下します。

人・モノ・カネ・情報を一気に流し込むのです。すると、当然ながらツキのある分野なので、その分野については、成長させる努力は圧倒的に少なくて済みます。まずは今の状態からツキを取り戻すのが先決なのです。

新しい事に常に挑戦する事は大切なことです。しかし、その挑戦には実行してもよいタイミングがあります。その時期でないと、どんなに素晴らしいマーケティングモデルでも、結果的に不発に終ってしまいます。自社の現状を正しく理解して下さい。

今の状態はツイていますか? それならば新たな領域へのチャレンジは有効です。反対に、ツキを失っていると判断しているのであれば、まずは真剣に自社を見て下さい。そこに現状を打破する何かがあります。

次回は、「簡単! ビジネスモデル発想法」についてお話させていただきます。


著者プロフィール
1998年、桃山学院大学経営学部卒業。某大手SIerでの営業を経て、船井総合研究所に入社。以来、年商30億円未満のソフトハウスを専門にコンサルティング活動を行う。「経営者を元気にする」をモットーに経営計画作り、マーケティング支援、組織活性化のため全国を飛び回っている。毎週1回メルマガ『ソフトハウスのための幸福経営論』を発行。無料小冊子『ソフトハウスが元気になる30の法則!』も発刊。