迷わせない画面のポイント2点目は,操作方法に関することである。利用者がユーザー・インタフェースの操作方法に迷ってしまうようでは,システムは使われなくなってしまう。

 多くの機能を備えようとすると操作は複雑になりがちで,長時間の研修が必要になったり,マニュアルを見ないと使えなくなったりしてしまう。INAXと日本ケンタッキー・フライド・チキンの情報系システムの担当者は,こうした問題を解決した。

Excelなら使ってもらえる

 INAXの白根澤卓郎氏(経営管理本部 情報システム部 生産システムグループ 課長)らは,2006年11月に情報系システムを刷新した。そこでこだわったのは,利用者が使う分析ツールである。

 従来の情報系システムでは著名な分析ツールを導入していたが,「利用者の使っていた画面は操作方法や用語が難しく,一部の利用者以外は使いこなせていない状況だった」(INAX 白根澤氏)という。そのシステムでは品質管理に関するデータを扱っており,不具合が増えつつある商品をできるだけ早い時期に発見したり,商品の不具合を改善した効果を分析したりする。商品の良しあしに影響する重要なシステムなので,情報活用が不十分であることは見過ごせなかった。

 白根澤氏は,誰でも簡単に操作できるツールでなければならないことにこだわった。しかし,分析するとなるとある程度の機能は必要だ。そこで思い至ったのが,社員が日常的に使っているExcelである。Excelなら多くの社員が使い慣れているので,これを基にしたツールであれば多くの社員に受け入れられると考えた。

 そこで見つけたのが「Dr.Sum EA」(提供はウイングアーク テクノロジーズ)だった(図1)。これはデータ・ウエアハウス(DWH)として使うサーバー・ソフトと,クライアント・ツールからなる。クライアント・ツールはExcelのアドオン・ソフトとして提供されるので,利用者は基本的にExcelだけを使っているイメージで操作できる。白根澤氏は「(クライアント・ツールの)起動はExcelの画面上部に配置されるボタンをクリックするだけ。DWHの中の見たいデータは,起動後に表示されるデータ項目からドラッグアンドドロップするだけ。使いやすいと感じた」とツールの感想をこのように述べる。

図1●INAXは,利用者が使い慣れた環境で分析できることを重視している
図1●INAXは,利用者が使い慣れた環境で分析できることを重視している
欲しいデータ項目を選ぶと,表計算ソフトのExcelにデータが表示される。通常使っているソフトなので,使い方に迷わないメリットがある

 そうやってDWHからデータを取り出したあとは,Excelの機能を使って加工する。「社員はExcelを使い慣れているので教育もほとんど必要なかったし,利用者向けの利用マニュアルを作成する必要もなかった」(経営管理本部 情報システム部 生産システムグループ 小竹聡氏)という。

 そのほか,多機能なグラフを簡単に作れるようにするため,「Dr.Sum EA Visualizer」(提供はウイングアーク テクノロジーズ)を導入した。これにより,クリックすればより詳しいデータが表示されるようなグラフを簡単に作ることができる。

 これまでは,利用者が情報系システムからデータをダウンロードし,そのつど手間をかけてグラフ化していた。「本来の業務をこなしながら利用者がグラフを作っていたので,データをグラフで見る必要が出てからグラフを作成するまでに時間が経ってしまっていた」(小竹氏)という。