セブン&アイ・ホールディングスの佐藤政行氏(執行役員 システム企画部 CVSシステム シニアオフィサー)のこだわりはユーザー・インタフェースにある。画面をひと目で理解でき,そこから新たな気づきを生み出せることが重要だと説く。つまり“パッ”と見て分かって,“アッ”と気づけることだ。そこでポイントになるのは,(1)一つの画面,(2)慣れたツール,(3)文字情報の可視化――の3点だ。

 このうち「一つの画面」の意味するところは,関連する情報を組み合わせて1画面で表示したり,一つの画面から簡単な操作で必要な情報を取り出せたりして,利用者を迷わせないようにするということだ。あなたはこれまで,「データAの一覧」「データBの参照画面」といったように,情報の種類で分けて表示させていなかっただろうか。これでは,データAとデータBが関連するとき,複数の画面を見比べて利用者の頭のなかで情報を結び付けねばならず,新たな気づきどころか,重要な情報を見落とすことになりかねない。

 関連する情報を見極め,組み合わせるなど最適な形で画面に表示することがポイントだ。

発注端末で催事情報を見せる

 達人の佐藤氏が手がけたセブン-イレブンの事例を見てみよう。セブン-イレブンの情報系システムは大きく,店舗で使う「店舗システム」と本部で使う「本部情報分析システム」がある。

 まずは,2006年10月に刷新した店舗システムに注目する。

 セブン-イレブンの店舗運営において最も重要な業務の一つが,商品発注である。発注量は多すぎても少なすぎてもよくない。多すぎれば廃棄ロスが増えるし,少なすぎると機会損失を招くことになる。適切な発注量をつかむには,販売傾向を分析するといった機能が店舗システムに欠かせない。

 ただ,発注業務にかかわるスタッフが多いだけに,発注業務の経験が少ないスタッフも中にはいる。そのようなスタッフでも使いこなせるように,分かりやすい発注画面を作成しなければならない。

 店舗システムは,主に店舗奥に配置したストア・コンピュータを中心に,携帯型の発注端末(GOT)やレジのPOSレジスタなどで構成している。

 このうち,GOTの画面に表示する情報を大幅に見直し,カレンダーと天気予報,全国的な催事,自店近くでの催事,セブン-イレブン全店で催すキャンペーン情報などを表示するように変更した。

 全国的な催事の欄に節分とあれば,“太巻きが売れるかもしれない”。自店近くでの催事の欄に近所で工事現場ができたとあれば,“お弁当やお茶が普段よりも多く売れるかもしれない”などといった仮説を立てることができる。こうした天気予報や催事情報は,以前はストア・コンピュータからしか参照できなかった。だが,「携帯端末であるGOTを持ちながら発注する際にこそ,これらの情報が必要だと考え,GOTからも参照できるように改修した」(佐藤氏)。

 また,商品の発注数を入力する画面を改善し,発注する際に参考にする情報を,ボタン一つで取り出せるようにした。画面下部に,過去の販売実績を参照するボタンや,あまり売れ行きがよくない“死に筋商品”の情報を得る「死筋状況」というボタンを配置した(画面1)。これらは発注作業の流れを見直し,GOTに追加した機能である。

画面1●セブン-イレブンで使用している携帯型発注端末の画面例
画面1●セブン-イレブンで使用している携帯型発注端末の画面例
発注時に“死に筋商品”を考慮できるように,画面下部の分かりやすい位置に死に筋商品の情報を得られるボタンを配置している

 GOTと同様にストア・コンピュータの画面も改善した。以前からストア・コンピュータでは,天気予報や催事情報の参照,売り上げ実績の参照,商品の発注などができたが,それぞれ別々のアプリケーションになっていた。そのため利用者は「必要な情報がどのアプリケーションから得られるのかを知っていなければ使いこなせなかった」(佐藤氏)。そこでGOTと同様に,画面内のボタンを1回クリックすることで,必要な情報を得られるようにした。