迷わせない画面のポイント3点目は「文字情報の可視化」である。これまで情報系システムでは商品の売り上げ情報などの数値データを主に扱ってきたが,各種報告やクレームなど文字データとして蓄積される情報も重要である。多くの場合文字データは紙やオフィス・ソフトに蓄えられてきたが,それでは文字情報を生かしにくい。

曜日ごとの偏りを“見える化”

 高齢者向けの福祉施設を運営する吉祥寺ホームの阿部俊司氏(サービスサポート室 品質管理担当 室長)らは,入所者の事故やヒヤリハット(転倒など,大きな事故につながる恐れのあった出来事)の情報を管理している。

 以前は,事故やヒヤリハットが発生するとそれを適切に対処した後,紙やExcelなどに記録を残してきた。こうした情報を基に,事故やヒヤリハットの原因を突き止めて予防策まで打ち出したかったが,「1枚1枚の紙をめくって,新たな発見をするのは至難の業。Excelでも一覧表で縦に並ぶだけなので,そこから根本的な事故の発生原因に気づくのは難しかった」(吉祥寺ホーム 阿部氏)。

 こうした状況を改善するため,Webブラウザから閲覧できるデータベース・システム「デヂエ」(提供はサイボウズ)を導入し,発生した事故やヒヤリハットをカレンダー形式で表示するようにした(画面1)。

画面1●吉祥寺ホームはカレンダー形式の画面で,異変に気づきやすくした
画面1●吉祥寺ホームはカレンダー形式の画面で,異変に気づきやすくした
「デヂエ」を使ってカレンダー形式で表示しているのは,事故やヒヤリハットの情報。一般的な一覧表形式で表示するよりも,週単位や曜日単位の状況をひと目で把握しやすい

 カレンダー形式で表示することで,週ごとや曜日ごと,時間帯ごとの,事故やヒヤリハットの多さや少なさが視覚的にとらえられるようになる。「カレンダーを縦に見て,同じ曜日に事故やヒヤリハットが多い場合,その曜日の担当者数が少ないことが原因ではないか。また,時間帯を見てお昼時に事故が集中していることが分かれば,お昼時は昼食を配膳するのに人手がかかっており,職員が目を離しやすいのではないか,と気づくことができる」(阿部氏)。こうした多面的な視点は,Excelの一覧表を見ているだけでは気づきにくい。

Webブラウザで文字情報参照

 デザートの製造・販売を手がけるモンテールの鈴木智也氏(取締役 管理本部長)らは,顧客からのクレームとその対応状況を画面でひと目で分かるようにした。吉祥寺ホームと同じく,サイボウズのデヂエを使っている。

 以前は,クレームが寄せられると,その内容をExcelに記入し,ファイル・サーバーに格納していた。クレームに対応するとその内容をExcelファイルに追記する。また,商品にトラブルがあった場合の商品の写真も,このExcelファイルに張り付けていた。

 クレームに関する情報はこのExcelファイルに集約されていたが,同時に書き込みができないことや,画像が重すぎてファイルをオープンできないなどのトラブルが続いた。そうした状況を改善するためにデヂエを導入。デヂエはWebブラウザからアクセスできる簡易データベースなので,複数人で同時に参照できる。また,データベース・システムなのでファイル・サイズが大きくなったからといって参照できないといったことにはならない。

 デヂエを導入したことで,簡単にクレーム情報を参照できるようになり,社員間での情報共有が進んだ。また,クレームをその内容や回数で容易に集計できるようになったので,「改善すべき対象や,その優先順位がすぐに分かるようになった」(モンテール 鈴木氏)という。