2008年第1四半期にリリースが予定されているWindows Vista Service Pack 1(SP1)で,米Microsoftはサービス・パックの役割を弱めようとしている。Vista SP1は,単なる修正プログラムの集合体ではなく,ユーザー体験を向上させる新機能や新しいデバイスへの対応なども含まれているが,Windows XP SP2のような大幅な改変にはならないだろう。

 Vista SP1でサービス・パックの役割が弱まるのには,いくつかの理由がある。Vistaのユーザーの多くは,様々な場所でインターネットに接続できる環境にあり,Microsoftの複数のオンライン・アップデート・サービスを通して,定期的に自分のシステムを自動アップデートしている。こうした数々の自動アップデートをまとめてMicrosoft Updateとみなすことも可能だろう (これらのサービスには「Microsoft Update」や「Windows Update」,「Office Update」,「自動更新機能」,「Windows Server Update Services」,「Microsoft Download Center」などが含まれる)。さらに,Vista自体の新しいアップデート・メカニズムのおかげで,Microsoftはサービス・パック以外の手段で,より迅速にユーザーのもとに様々な機能改善を届けている。

 Microsoftが日常的にユーザーに提供している機能改善とは,以下のようなものだ。

・セキュリティ修正

・新しいバージョンのVista内蔵アプリケーション(Windows Mail/Windows Live Mailや,Windows Photo Gallery/Windows Live Photo Galleryなど)

・新しいOSの機能(Windows Mobile Device Center経由のWindows Mobile同期など)

・新しいデバイス・ドライバやアップデートされたデバイス・ドライバ

・その他のシステム・アップデート(例えば,先日リリースされたVistaのパフォーマンスと信頼性関連のアップデート)

 Vista Ultimateのユーザーに提供されている「Windows Ultimate Extras」でさえも,新しい機能をWindowsユーザーに届ける別の手段に過ぎない,と考えることができる (もちろん,ExtrasはWindows Updateを通して提供されるわけではあるが)。

 Vistaの改良をけん引するのは,ユーザーによるフィードバックや,Vistaに内蔵されている「Windowsエラー・レポーティング(WER)ツール」や,WERツールに関連する「Customer Experience Improvement Program(CEIP)」,「Online Crash Analysis(OCA)」といったツールだ。これらのツールがあるおかげで,Microsoftだけでなくハードウエアやソフトウエアのサード・パーティが,ユーザーに最も必要とされている改善点を,以前よりもはるかに迅速にVistaに組み込めるようになった。

 つまり,新しいドライバやセキュリティ修正,アプリケーションの互換性フィックス,その他のソフトウエア・アップデートは,ユーザーにオンライン経由で自動的に配信されるので,Vistaは時間の経過とともに品質が向上していくのである。以前だと,こうした改善点を入手するには,ユーザーは不規則で,しかも間隔を空けてリリースされることの多い,モノリシックなサービス・パックを待たなければならなかった。

 Microsoftは,サービス・パック並みに重要な機能化以前の例として,最近リリースされて,実際にVistaの使い勝手を劇的に向上させた2つの重要な修正プログラムを提示する。8月上旬,同社は信頼性とパフォーマンスに関連するWindows Vista向けの修正プログラムを2つ発表した。もし同社が過去のOSのときと同様のリリース・スケジュールに今でも従っていたら,VistaのユーザーはSP1が出るまで,これらの修正プログラムを手にすることはなかっただろう。

それではWindows Vista SP1とは何か?

 形式的な背景情報の紹介はもういいから,実際のところWindows Vista Service Pack 1とはどういうものなのか早く知りたい,という人も恐らくいることだろう。そうした好奇心を抱くのは,当然のことだ。Microsoftは8月下旬,Windows Vista SP1はWindows Server 2008と一緒にリリースされる予定で,大規模なカーネル・アップデートが搭載されることになっている,と筆者に説明したにもかかわらず,その後で,同社はSP1をリリースするかどうかさえまだ決めていないとユーザーに信じ込ませるために,広報キャンペーンを開始した。

 実際に筆者は,MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏が,SP1のことが話題になっただけで困惑する姿を2度目撃したことがある。そして彼は2回とも,同社がそのリリースの開発に取り組んでいることを否定した。いささか疑わしく聞こえるかもしれないが,こうした判断に至った論理的根拠は次のようなことだろう。Microsoftは,同社のビジネス顧客がSP1の完成までVistaの導入を見合わせることを,非常に心配していたのだ(そして,今でも心配している)。というのも,ビジネス顧客は,最初のサービス・パックが出るまで,メジャーなWindows OSの導入を見合わせる,というのがこれまでの慣習だからだ。

 もちろん,この件で皮肉なのは,SP1に関する詳細があまり明らかになっていないため,SP1に関してあれこれ言えないことだ。しかし,数々の沈黙と言い逃れ,真っ赤なうそを経て,Microsoftは8月末,筆者が前から言っていたこととほぼ同じ内容の発表を行った(筆者が説明会で同社から直接この情報を入手したことを考えると,これは当然のことだ)。先述した通り,Windows Vista SP1の開発は活発に行われており,現時点では,2008年の第1四半期にWindows Server 2008と同時にリリースされる予定である(ただし,カーネル・アップデートについての言及は全くなかった。これに関しては,調査を継続するつもりだ)。

 Windows Vista SP1で予定されていることを以下に紹介する