KDDIとライブドアが,グーグルの無料メール・サービスである「Gmail」をベースにしたメール・サービスを開始した。その背景には,「ユーザーのメール利用方法の変化に対応したい」,「メール・サービスの開発・運営費用を抑えたい」といったメール・サービス提供側のニーズがある。
KDDIとライブドアで,サービスの位置付けやGmail採用の狙いは若干異なる。KDDIが9月下旬に始める「au oneメール」は,誰でも無料で使える新サービスだ(写真1)。既存の「DIONメール」や「EZwebメール」と並行して提供する(表1)。それでもau携帯電話を使っていればIDとパスワードの入力は不要であり,来春にはEZwebメールの送受信履歴をau oneメールに残せるようにする計画である。
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写真1●KDDIの「au oneメール」のPC用(左)と携帯用(中央)、ライブドアの「livedoorメール」(右) [画像のクリックで拡大表示] |
表1●KDDIとライブドアが始めるGmailベースの新メール・サービスの概要 | |||||||||||||||||||||
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KDDIは「第三のメール」に採用
au oneメールの狙いは,ISPメールでもなく携帯メールでもない“三つめのメール”。携帯電話のメール・アドレスを教えたくない,あるいはメルマガの受信にISPメールを使いたくないといった場面において,「KDDIがブランディングしたメール・アドレスがあれば従来と違う感覚で使ってもらえると考えた」(コンテンツ・メディア本部ポータルビジネス部の江幡智広課長)。
このサービスは,Gmailやそれを含む「Google Apps」をそっくり採用したわけではなく,個別案件で開発した。メール・アカウント発行とユーザー認証はKDDI,その他のメール部分はグーグルのシステムを使うが,グーグルのサーバーはGmail用とは別のものだ。無料のGmail同様,メール画面の右側には広告を出す予定である。
コスト減を第一に考えたライブドア
ライブドアが8月13日に始めた「livedoorメール」は,従来のサービスをGmailベースにリニューアルしたもの。グーグルがISP向けに提供する「Google Apps Partner Edition」を日本で初めて採用し,ライブドアの認証システムと連携させた。従来通り誰でも無料で利用できるが,Gmailと違い携帯電話からの利用には対応していない。
リニューアルに際してライブドアは,「メール・システムの刷新時期が来ていたので,再度自前で構築するかアウトソースするかを考えた」(メディア事業部の池邉智洋執行役員)。その結果,ブログなどのCGM(consumer generated media)サービスの開発を最優先することとし,メールはアウトソースすることにした。ちょうど検討している最中に,グーグルから今回の提案があったという。同社の場合,グーグルに支払うコストはゼロ。その代わり,メール画面の右側にグーグルが広告を出す。削減コストは「数千万円の前の方」(メディア事業部の田端信太郎執行役員)と見ている。
KDDIとライブドアがともに高く評価している点は,Gmailが持つメール検索機能とスパム対策機能が充実していること。「カスタマイズして使える」というGmailのSaaS(software as a service)的な側面が,ISPに受け入れられたといえそうだ。