ここまでイーサネット・フレームのフレーム長は最長1518バイトに決まっていると繰り返し述べてきた。だが実は,フレーム長を拡張している技術がある。VLANやジャンボ・フレームだ。Lesson4は応用編として,これらの技術について説明しておこう。

4バイトのVLANタグを間に挿入

 VLANとは,ケーブルや機器の物理的な構成とは異なる構成のLANを仮想的に実現する技術だ。代表的な実現技術としてポートVLANタグVLANという二つの方法があるが,このうちイーサネット・フレームを拡張して実現するのがタグVLANだ。タグVLANはIEEE802.1QとIEEE802.3acという規格で策定された。

 タグVLANでは,イーサネット・フレームの「送信元MACアドレス」フィールドと「タイプ」フィールドの間に仮想的なLANを識別する4バイトのVLANタグを挿入する(図4-1)。VLANタグは,そのフレームがVLANであることを示す「タイプ」と,VLANタグ・フレームの優先度やVLAN IDを示す「タグ制御情報」から成っている。

図4-1●VLANはイーサネット・フレームにタグ情報を追加する
図4-1●VLANはイーサネット・フレームにタグ情報を追加する
VLANのイーサネット・フレームは,送信元MACアドレスとタイプの間に「VLANタグ」を挿入する。
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 LANカードやLANスイッチはVLANタグの中のタイプ・フィールドを見て,10進表記で「33024」というVLANを示す値が入っていればこのフレームがVLANタグ・フレームと判断する。そして,次に続く2バイトがVLANタグのタグ制御情報,その後に続くのが通常のタイプ以降のフィールドと認識する。タグ制御情報には,VLANタグ・フレームの優先度や属するVLANの情報が入っている。

1522バイトになっても大丈夫

 ここで「イーサネット・フレームが本来の1518バイトより大きくなっても大丈夫なのか」と疑問に思う人がいるだろう。確かに,VLANタグを挿入すると,フレーム長は1522バイトになってしまう。

 ただ,コンピュータや通信機器をVLANに対応させるのはさほど難しくなかった。イーサネット・フレームのフレーム長は規格で1 5 1 8バイトまでと決まっているが,実はコンピュータや通信機器のLANカードの多くは,効率を考えた結果,フレーム長の最大値が1536バイトまたは2048バイトまでなら処理できるように作られていたのだ。そのため,ドライバをVLANに対応させ,VLANタグを付加したり判別できるようにすれば問題なかった。

データの長さを6倍に拡張

 これに比べると,ジャンボ・フレームへの拡張は難しい。

 ジャンボ・フレームはデータ部分に入るデータ量を増やし,転送効率を上げる技術だ(図4-2)。

図4-2●イーサネット・フレームを拡張して,たくさんのデータを運べるようにしたのがジャンボ・フレーム
図4-2●イーサネット・フレームを拡張して,たくさんのデータを運べるようにしたのがジャンボ・フレーム
ジャンボ・フレームはイーサネット・フレームのデータ部分に入るデータ量を1500バイトよりも大きくすることで,データの転送効率を上げる技術。データ部分に入れるデータ量はベンダーによって異なるが,一般的には8000~1万6000バイト程度だ。  [画像のクリックで拡大表示]

 もともとイーサネット・フレームのフレーム長が1518バイト以内に決められたのは,あまり大きいフレームを送ると転送完了まで時間がかかり,その間LANを占有してしまう恐れがあるからだった。だが,LANが高速化した現在は,フレームを小分けにして送ると,送信間隔や個別のフレームの処理時間が増えるため,かえって効率が悪くなってしまう。

 そこで,フレームを拡張してより多くのデータを格納できるようにしたのがジャンボ・フレームだ。ジャンボ・フレームのフレーム長はベンダーや機器によって異なるが,8000~1万6000バイト程度に設定されている。ヘッダーなどの部分は変わらないので,通常のイーサネット・フレームの5~10倍のデータを一度に送れることになる。

 ただ,ここまでフレームが大きくなると,通常のLANカードでは処理できない。そのため,ジャンボ・フレームは対応した機器間での利用に限られる。通信経路の途中に1台でも対応していない機器があったら通信できない。

 また,ジャンボ・フレームはVLANと違って規格が標準化されていないため,実装がベンダーによって異なる。処理できるイーサネット・フレームの最大長もまちまちだ。送信側よりも受信側の機器の方が処理できる最大のフレーム長が小さいと,送信するフレームの大きさを受信側に合わせるので転送効率が上がらない場合がある。