Lesson1では,イーサネット・フレームとはそもそも何か,どのような役割を果たすのかを説明する。

LANでデータを運ぶ固まり

 イーサネット・フレームは,イーサネットで機器が通信するときの基本単位である。それは具体的にどういうことなのだろう。

 コンピュータや通信機器がやりとりするデータは「0」と「1」が並ぶビット列でできている。これをイーサネットで送るときは,パルスの信号に変換しなければならない。この際,データがある程度以上の量の場合は,決まった長さの“固まり”に切り分ける。この固まりがイーサネット・フレームだ(図1-1)。

図1-1●イーサネット・フレームはイーサネットでデータを送る基本単位
図1-1●イーサネット・フレームはイーサネットでデータを送る基本単位
イーサネットでデータを送るときは,決まった長さの固まりに分割する。この固まりを「イーサネット・フレーム」という。

 イーサネットにおける通信では,イーサネット・フレーム単位ですべての処理をする。イーサネット・フレームごとに「MACアドレス」というあて先や送信元の情報を付けて送信し,受信時にはデータが正しく届いているかどうかをチェックする。

 これは宅配便などで小包を送るのと似ている。小包はトラックの荷箱に載せられ,配達される。着いた小包のチェックも荷箱ごとだ。小包がデータ,荷箱がイーサネット・フレームに置き換えられる。

データは区切った方が扱いやすい

 なぜ送る際にいちいちデータを細かく区切るのか。理由は大きく二つある。

 一つは,特定の通信がイーサネットを占有するのを防ぐこと。イーサネットは1本のケーブルを複数台のコンピュータや機器で共有するのが基本的な考え方だ。仮にあるコンピュータがデータを区切らずに送ってしまうと,そのデータが送り終わるまで,ほかの機器はデータをまったく送信できなくなってしまう。

 もう一つの理由は,1度に送れるデータのサイズが決まっていた方がコンピュータや通信機器が処理をしやすいからだ。いろいろなサイズのデータが存在すると,まとめて処理したり,特定の部分だけを見て簡易的に処理するのが難しくなる。むしろ無駄なデータを入れてでもサイズをそろえたほうがコンピュータでは扱いやすい。小包を運ぶ場合に荷箱のサイズが決まっている方が荷物の積み込みや配達,チェックがしやすいのと同じだ。

 そのために,イーサネットではデータをイーサネット・フレームに収まる長さに分割していく。最も一般的なIPの例で見てみよう(図1-2)。まず,データをイーサネット・フレームに収まる長さのIPパケットに分割し,それをイーサネット・フレームに入れてネットワークに送り出している。

図1-2●イーサネット・フレームの長さに合わせてデータを分割
図1-2●イーサネット・フレームの長さに合わせてデータを分割
IPはアプリケーションから受け取ったデータをイーサネット・フレームの長さに合わせて分割しIPパケットを作る。これをイーサネット・フレームに詰めて,ネットワークに送り出す。
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 送り出されたイーサネット・フレームがあて先コンピュータに届くと,送信するときとは逆の手順で開かれ,元のデータに組み上げられる。

運べるデータは1500バイト以内

 では,実際にイーサネット・フレームの長さはどれくらいなんだろう。イーサネット・フレーム全体の長さは64~1518バイトと決められている。これを「フレーム長」という。この中には,あて先や送信元を示すMACアドレスなどの制御情報も含む。そのため,一つのイーサネット・フレームで実際に運べるデータは46~1500バイトとなる。