Xenはオープンソース・ソフトウエアであり,今もなお発展途上にある。そのため,商用ソフトウエアのように,インストール手順がまだ確立されていない。使用するLinuxディストリビューションなどによって,仮想環境の構築方法は様々だ。そこでここでは,Xenのインストール方法を紹介する。
Xenのインストール方法
最近では,ディストリビューションに標準でXenが搭載され,インストールツールなどを使用して最初から簡単にXenの環境を構築できるものも登場している。一方インストールツールなどがまだそろっていないXen対応のディストリビューションも数多くある。しかし,基本的なXenの仕組みはどれも同じだ(図1)。
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図1●Xenの仕組み |
ここでは,Xenの仕組みを理解するために通常のLinux環境からXen環境を構築する手順について紹介しよう。Xenによる仮想環境を構築する場合,まずはXenの管理OSとなる「ドメイン0」を作成する必要がある。ドメイン0の作成手順は次の通りだ。
1.ハードウエアにXenに対応したLinuxをインストールする。この時点では通常のカーネルでLinuxが動作している(図2の1)。2.そこへXenをインストールする。するとXenのカーネルが作成される(図2の2)。仮想環境を動作させるためには,この新たに作成されたXenのカーネルで起動させる必要がある。
3.ブート・ローダーの設定を,Xenのカーネルから起動させるように変更する。そして再起動するとXenのカーネルが起動し,その上で元のLinuxがドメイン0として動作する(図2の3)。
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図2●Xenをインストールする手順 |
一見,もとのLinuxと変わりがないように見えるが,そこで動作しているのはXenの上で動くドメイン0となる。
3種類あるXenのインストール方法
ではXen対応OSにXenをインストールする方法を紹介しよう。それには次のような,3つのインストール・パターンが考えられる。
(1)ソース・コードからコンパイルしてインストールする。(2)コンパイル済みのバイナリ・アーカイブ(Tarボール)を使ってインストールする。
(3)ディストリビューション向けに作成されたRPM(RPM Package Manager)パッケージを使ってインストールする。
このうち最も手軽にXen環境を作成できるのは,(3)のRPMパッケージを使用する方法である。Fedora Core6やSUSE Linux 10など,無償で利用できる代表的なLinuxディストリビューションには既にXenのパッケージが含まれており,簡単にXen環境を構築できる。
またXenSourceのダウンロード・サイト(http://xen.xensource.com/download/)からは,Red Hat Enterprise Linux4,Red Hat Enterprise Linux5,openSUSE10の3つのディストリビューション向けに作成されたRPMパッケージが,それぞれダウンロードできる。ただしRPMパッケージは,その対象ディストリビューションでしか使用できないので注意されたい。
RPMパッケージが用意されていないLinuxディストリビューションを使う場合は,コンパイル済みのバイナリ・アーカイブからインストールするか,もしくはソース・コードからコンパイルしてインストールする。ソース・コードからコンパイルする場合,Linuxカーネルのソース・コードも必要となるため,インターネットが使用できる環境で行うか,あらかじめ対応しているLinuxカーネル・ソースをkernel.orgのWebサイトなどから入手しておく。
なお,これらのバイナリ・アーカイブやソース・コードも,XenSourceのダウンロード・サイト(http://xen.xensource.com/download/)から入手可能だ。
Xenはオープンソースであることから,まずは無償で入手できる非商用のLinuxディストリビューションに取り入れられ,開発・検証されている。最近では商用環境のLinuxにもXenが取り入れられるようになった。2006年7月に発表された商用ディストリビューションであるSUSE Linux Enterprise Server 10や2007年3月に発表されたRed Hat Enterprise Linux5には,Xenが搭載されている。
今回は,Xenに正式対応していないRed Hat Enter-prise Linux4 Update4とディストリビューションにXenが搭載されているSUSE Linux Enterprise Linux 10および,Red Hat Enterprise Linux5を用いて,Xenのインストール方法を紹介する。Red Hat Enterprise Linux4 Update4はXenに正式対応していないため,ここで紹介する方法がLinuxディストリビュータの正式な手法ではないこと,また今後変更される可能性があることを,あらかじめご容赦いただきたい。