野村総合研究所 松本 健


仮想サーバーの信頼性を高める

 2つ目の考慮点は,仮想化したときの信頼性である。仮想サーバーは1台の物理サーバー上で複数稼働させることが可能である。この構成で,物理サーバーが障害により稼働できなくなると,仮想マシン・モニターが停止し,ひいては仮想サーバーまで停止してしまうことになる。業務への影響が非常に大きい。

 物理サーバーの可用性を高めるには,高可用性サーバーを利用したり,複数台の物理サーバーを利用してHA(High Availability)構成を採ることが考えられる。こうした物理サーバーの信頼性向上に加え,仮想サーバー自身で信頼性を高める必要もある。ここでは,仮想サーバーの信頼性,可用性の向上策を説明する。

 通常のシステム構築でサーバーの信頼性向上策として用いられるのが,クラスタリングや多重化などによるHA構成である。仮想サーバーについても同様の構成で信頼性を向上できるが,クラスタリング・ソフトウエアや負荷分散装置が仮想サーバーに対応していることを確認する必要がある。仮想サーバーのHA構成のパターンとしては,正常系と待機系の両方が仮想サーバーであるパターン,正常系または待機系のうち一方が物理サーバーでもう一方が仮想サーバーのパターンが考えられる。利用するクラスタリング・ソフトウエアなどが,こうした要件に応じた構成が採れるかどうかもチェックしておきたい。

 待機系を担うサーバーは,障害が発生しない限りは業務処理を行わないので,システムの中の休眠リソースと見なせる。仮想サーバーを活用することで,このような“遊んでいる”リソースを削減できる。待機系を仮想サーバーで構築した上で,通常は物理リソースの配分を少なくしておく。正常系に障害が発生した場合,正常系からフェールオーバーさせるタイミングで仮想サーバーのリソース配分を増やす(図1)。このような待機系の仮想サーバーを1つの物理マシン上に集積すれば,物理リソースの有効活用につながる。

図1●障害時には割り当てリソースを増やす
図1●障害時には割り当てリソースを増やす

 仮想サーバーの可用性を高めるために,仮想サーバーを別の物理マシンへ動的に移動する方法もある。

 この技術は,ある物理サーバー上で稼働中の仮想サーバーを,それとは別の物理サーバー上に新たな仮想サーバーとして作成する。その後,元の仮想サーバーのメモリーの状態を新しい仮想サーバーへコピーし,仮想サーバーのクローンを作成。最後に,元の仮想サーバーを停止・削除することで新しい物理サーバー上への仮想サーバーの移動が完了する(図2)。この機能は,米VMwareの「VMotion」などが提供している。

図2●仮想サーバーを別の物理サーバーに移動する
図2●仮想サーバーを別の物理サーバーに移動する

 この方法を使えば,物理サーバー上で障害につながるようなハードウエア異常を検知した場合や,仮想サーバー内でアクセス集中などによる突発的な負荷がかかった場合に,リソースに余裕のある物理サーバーへ仮想サーバーを移動させるようなことができる。ただし現状では,移動元と移動先の物理サーバー間のスペックの違いで制限があったり,SANなどの高速ネットワークを用意する必要があったり,といった条件があるので利用に当たっては事前に確認しておきたい。