グローバルウェブサイトマネジメント体制

 サイトマネジメント、しかもレイヤーはグローバル。先回は、リージョン単位でのコミュニケーションパスの効率性について解説した。グローバルでビジネスを展開する企業は日本のみならず世界各国に存在する。私も各国のいろんな会社の方々と今まで多くの意見交換をしてきたが、大体同じようなところで悩み同じような課題を抱えていることもわかったし、逆によく相談されたりもしている。

 皆さん一様に、ブランチが本社の言うことをきかない。 と言われる。これは、当然そうだと思う。国も言葉も文化も慣習も価値観も違う人たちが、一様に右にならえするほうが気持ちが悪い。

 どのような場面であれ、この壁は乗り越えないと前に進まないのも事実である。ここは、情報を出すほう、ディレクションを出すほうが一層の努力をして臨まなければ変わらないと思う。これら国を越えた方々とのコミュニケーションは、相手が理解するまで説明することが最低条件であろう。

 まず、コミュニケーションありき。

フォーメーション

 コミュニケーションは言葉ありきで、かの聖書の冒頭は、この地球の始まりは、混沌としていた闇の夜で、「はじめに言葉ありき、、、。」というフレーズからはじまっている。言葉をつかうことで自分と他の人がコミュニケーションでき、言葉を使うことで抽象的に物事を考えることができるようになる。

 この重要なファクターとなる言葉は努力して向上させるに越したことはない。 したがって、ディレクションを出す側には少なくともコミュニケーションに必要な言語に長けた担当者が必要であろう。最近のコミュニケーションは英語がもっともポピュラーだが、英語以外に中国語やスペイン語などができると更に円滑なコミュニケーションが実現するだろう。

 最大公約数的に考えると最低限英語は必要だが、特に中南米ラテンアメリカで、よりフレンドリーにコミュニケートするにはスペイン語のほうがよい。

 理想は、Web担当部署全員が、これらコミュニケーション対応が可能であること。困難な場合は少なくとも数名(病欠や長期休暇時対応などを考慮して)は必要だ。したがって、日常的な自己研鑽でWebに関することはもちろんだが、言語に磨きをかけることは継続させなければならない。

継続的なコーディネート体制

 ガバナンスというと外国の方々は身構える事が多いため最近はコーディネーションという言葉を使っている。発行した規則(ガイドライン)が守られているか、そして実行されているか。規則の主旨は理解されているか‥など、種々の視点で現地とのコミュニケーションをおこなう。また、日々の通常のコミュニケーションが支障なく行なわれるよう、コミュニケーションパスを常にメンテナンスし確保しておかなければならない。

 これも良くあることだが、各国の労働に対する考え方や慣習が異なることも理解しておかなければならない。雇用形態もさまざまであるが、やはり一番大きいのは人々の雇用に対する考え方である。

 一般的には数年勤めて、次のステップへキャリアアップ、そしてまた数年、と年を重ねながらキャリアと年収を上げていくというパターンが多い。そういう日本でも段々とその傾向が強くなってきたような気もする。

 そのような理由で、Webの責任者になっても、3~5年するとどこかへ転職していなくなるというケースが多い。これが、各国毎に発生するわけだから、グローバルレベルでは、毎年いや数ヶ月で誰かが入れ替わっていることになる。

 したがって、規則やディレクション等はいつも同じことを叫び続けなければ浸透しないことになる。ここであきらめてはいけない、世の中こういうものだと考え、そのような状況下でいかにコーディネートしてグローバルレイヤーで均一性を確保していくかを考えればいいのである。

 それには、一年中(毎日)コーディネートを専門とする担当(窓口)をアサインし、各国とのコミュニケーションを継続させる必要がある。規則関連の問い合わせ対応から監査、指示、場合によっては相手先へ出向いて打ち合わせをするなどの業務になる。先回述べた各リージョン内でのミーティングなどを利用すると効果的かもしれない。

 各リージョン、各国を訪れる回数を重ねるとその地域の価値観や考え方もよくわかるようになるため副次的なメリットもある。各国独自の文化の中で、本社のコンセプトを伝えるための最善策(表現や手法)アイデアなども体感的に出せるようになるかもしれない。また、現地スタッフとのフェイストゥーフェイスのコミュニケーションでより一層の理解と今後のいい関係が築けるきっかけともなるだろう。

 グローバル展開をおこなっているいくつかの米国企業本社のWeb責任者の訪問を受けたことがあるが、実際に会って話をするとやはりかなり身近に感じ、その後のお付き合いもスムーズにいきやすくなってくる。時代が変わっても、 これがコミュニケーションの基本であろう。

 この基本をベースに日常の連絡体制、コミュニケーション手段、情報共有手段等を実現させるための組織体制を構築すれば必然的に理にかなった体制ができあがるだろう。