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情報システム

動き出したリアルタイムSCM

日経コンピュータ

第6回 担当者の経験でデータを修正

ティアック

2007/09/27
安東 一真=日経コンピュータ
出典:日経コンピュータ 2007年8月6日号  47ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 中堅音響機器メーカーのティアックにとっては、かつての主力事業だったノート・パソコン向けの薄型光学ドライブの在庫を削減することが至上命題だった。大手企業の参入などによって製品価格が急速な下落を続けた結果、同社の業績にとって無視できない“問題児”になっていたからだ。

 光学ドライブを主力とする周辺機器は、ピークを迎えた01年3月期には売上高の69.1%に当たる1245億円に達した。その商品構成が災いし、価格下落が進んだ02年3月期には、22億円の赤字に転落した。

 薄型光学ドライブのような製品は、在庫期間が伸びるほど、売価が下がっていく。キャッシュフローや収益の改善には在庫削減が不可欠だった。同社はSCM改善の切り札として、製販情報を収集する「グローバルPSIシステム」を02年に稼働させたが、機能するまでに予想以上の期間がかかった。

受注見込みが集まらない

 同社でSCMがなかなか効果を上げなかったのは、販社が受注見込みを計画通りの頻度で入力しなかったことが原因である。データの入力が二度手間になることを嫌ったのだ。

 販社の実際の業務では、受注データを入力しても、結局は工場に直接電話などで問い合わせるのが一般的である。受注データを入力して工場が納期を返しても、顧客の要求はもっと厳しいことが多い。「なんとか増産できないのか」「ほかの工場は空いていないのか」といった交渉が、工場の生産部門との間で必要になる。

 最終的には、こうした交渉の結果を受けて、データを入力し直すことになる。システムに毎週データを入力しても、工場との交渉が減るわけではない。

 販社側の対応には限界があると判断したティアックは、工場の担当者への協力を求めることで問題を解決した。

 販社からの足りない情報をメールや電話などを使って聞き出し、経験を基に補正して、システムにデータを入力するようにしたのだ。個別の販社あるいは担当者によって、「この担当者はいつも強気だから2割引いておく」または「いつも慎重なので3割足しておく」といった修正を施す。

 こうして処理した後のデータをグローバルPSIシステムに入力し、生産計画を決定する。努力の結果、在庫の量は減った(図1)。07年3月期の在庫金額は、02年3月期から7割近く下げた28億円になっている。

図1●ティアックは光学ドライブの在庫を大幅に削減
図1●ティアックは光学ドライブの在庫を大幅に削減
事業の選択と集中により光学ドライブ事業の縮小を進めるなか、02年からSCM改革を進めて在庫金額を縮小した

 需給調整以外で在庫削減に寄与したのは、03年3月期に実施した物流改革である。主な国際物流の手段を海運から航空に切り替えたのだ。欧州に船で商品を運ぶと1カ月程度の時間がかかる。その間に製品価格が下がることによる損失の方が、航空運賃によるコスト増よりも大きかった。輸送期間を短くしたことで、商品が売れるまでの期間も短縮し、在庫の回転率も高まった。

 ティアックは今後、「音響機器の事業部などにグローバルPSIシステムを転用していく」(和田伸夫 事業戦略室長執行役員)考え。音響機器は光学ドライブほどの短納期、短商品サイクルを求められないため、システムを使った需給調整が機能しやすいとみている。

需要予測ソフト依存から脱却 カシオ計算機

 カシオ計算機は、生産計画システムの高速化で在庫削減に成功した。従来、数時間かかっていた生産計画の計算時間を数十分に短縮し、生産計画の基になる仮説を何度も検証し直せるようにしたことが成果をもたらした。システムを刷新したことで、以前よりも担当者が柔軟に生産計画を立てることができるようにしたことが成功の要因だ。

 ただ、ここまでの道のりは平坦ではなかった。i2テクノロジーズの需要予測ソフトを採用した、カシオ計算機の第1次SCMプロジェクトは、1999年から02年に数億円をかけて進めたが成功とはいえない結果に終わった。

 システムなどが計画通りに機能せず、99年3月末に3.0カ月分だった棚卸資産回転月数が、02年3月末には3.2カ月と増えたのだ。同社の安西仁 業務開発部プロジェクト推進グループグループリーダーは「何でも自動化しようとし、機械に頼りすぎたのが敗因」と分析する。

 失敗を踏まえ、第2次のSCMプロジェクトでは方針を転換した。需要予測は基本的に人間が実施するように変更。需要予測を支援するために、生産計画システムを04年6月に入れ替えた。並行して業務改善を進めた結果、07年3月末の棚卸資産回転月数は1.8カ月にまで下がった。

 現在、同社の工場には受注見込みなどのデータが販社からメールや電話で毎日届いている。これらの情報を基に需要を予測し、生産計画システムに入力する。システムには、キナクシス・ジャパンのソフトを用いる。

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