ここ数年、CRM業界は派手な動きが見られなかった。2000年前後をピークに国内のCRMブームは過ぎ去り、CRMパッケージ・ベンダーの買収・合併が続いた。「1999年頃、米国ではCRMベンダーに対して、思った通りの効果が出なかったという趣旨の訴訟問題が起き始めていた。日本でもネガティブになる時期が到来する芽はあった」と、CRM協議会の藤枝純教理事長は当時を振り返る。

 ところが、経済環境の好転とともに、再び国内でもCRMの投資意欲が回復してきた。内部統制対応やセキュリティ対策など、なすべき投資に加え、“攻め” のIT投資に対して前向きになってきたのだ。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が2月にまとめた調査でも、07年以降のIT投資分野として CRMを選ぶユーザーは全体の25%に及び、生産管理やERPパッケージ(統合業務パッケージ)に次いで多かった。

 冷え込んだ地面が徐々に暖まり始めていることに、CRMパッケージ・ベンダーは手応えを感じている。06年末から07年初めにかけて、老舗のCRM製品がバージョンアップしただけでなく、後発のソフトウエア・ベンダーが新製品を投入するなど、新しい風が吹き始めている。

現場の不満は強い

 07年1月にCRM市場に新規参入したワークスアプリケーションズの石島友晴営業本部CRMソリューショングループマネジャーは、現状を次のように分析する。「05年に、300~400社のユーザー企業を対象に足を運んで市場調査をしたところ、約1割が導入したCRMシステムを実質的に捨ててしまっていた。一部の機能だけを使っている企業もあったので、CRMシステムの活用をあきらめた企業は相当数あるのではないだろうか」。

 「パッケージ製品を使うユーザーは全体の3割程度」と言われるCRM市場。導入してみたものの、過大な期待を満たせずに距離を置くユーザーが増えた結果なのかもしれない。では、CRMパッケージのどこに問題があるのだろうか。CRMベンダーなど業界関係者の多くが、現場の不満が強いことを指摘している。

 「従来の営業業務に加えて、入力作業が重くのしかかる」、「せっかく入力した情報を活用する場面が少ない」、「自分しか見ていない情報入力は空しい」、「社内の仕事のやり方とCRMパッケージの手順に違いがありすぎる」といった顧客の声がますます強くなってきた(図1)。

図1●以前は使いにくいシステムというレッテルを貼られがちだったが、現場向けの機能を強化するCRM製品が増えてきた
図1●以前は使いにくいシステムというレッテルを貼られがちだったが、現場向けの機能を強化するCRM製品が増えてきた
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