KDDIは6月,アプリケーション・レイヤーへの進出を図り,マイクロソフトとの提携を発表した。KDDIは2月にサーバー構築を含めたSI事業の強化でユニアデックスと提携を結んだばかり。今回の提携は法人戦略強化の第二段となる。KDDIは「大企業を対象とした本格的なシステム開発を手掛けるのは厳しい」(執行役員常務の田中孝司取締役ソリューション事業統轄本部長)と認識しており,マイクロソフトとの提携によって中堅・中小企業向けSaaS市場にターゲットを絞る。

網機能を一部公開,アプリ開発促す

 SaaS市場を開拓する上で重要となるのがパートナー企業との協力だ。具体的には,auの携帯電話向けに提供する認証や課金,GPS(全地球測位システム)を利用した位置情報といったプラットフォーム機能をパートナー企業向けに公開する(図1)。パートナーは営業支援や顧客管理,財務会計といった業務アプリケーションと,これらの機能を連携したサービスを開発し,ユーザーに提供できる。

図1●KDDIが考えるSaaS戦略
図1●KDDIが考えるSaaS戦略
認証や課金,位置情報といった携帯電話網内の機能をパートナー企業に公開し,同社の携帯電話と連動したSaaS型の業務アプリケーション・サービスを拡充していく。パートナー企業による新サービスの提供は2007年度中に始まる見込み。
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 「音楽配信サービス『au LISTEN MOBILE SERVICE』(LISMO)で端末認証や料金回収代行の枠組みを提供しているほか,位置情報の公開も既存サービス『GPS MAP』で実績がある。パートナーがこれらの機能を選んで自社サービスに手軽に組み込める“マッシュアップ”の世界を考えている」(KDDI ソリューション事業統轄本部戦略企画部新戦略グループリーダーの大貫祐嗣次長)。

 マイクロソフトと共同でパートナー向けの支援プログラム「SaaS Support Program」(仮称)も用意する予定で,10月に詳細を発表する。パートナーは6月末時点で大塚商会など7社が参加を表明している。

au携帯でOutlookを利用可能に

 KDDI自身もSaaS型サービスを2007年度中に開始する。マイクロソフトのホスティング・サービス向け製品を使って,メールやスケジュール管理,アドレス帳の機能をインターネット経由で利用できるようにする予定だ。パソコンだけでなく携帯電話向けにも提供し,「auの携帯電話でOutlookと同じ機能が利用できるようになる。会社のアドレスを使ったメールの送受信も可能」(田中取締役)。月額料金については「3けた台(1000円未満)で提供したい。2~3年以内に100万IDの加入を目指す」(同)と意気込む。

 新サービスは既存の携帯電話からの利用を想定している。「最近スマートフォンが増えているが,業務に不可欠な状況を作り出せなければ企業での導入は進まない。現在提供されているスマートフォンとは違うことをやりたい」(田中取締役)という。