ITの世界にどっぷりとつかっている人なら,ソフトウエア,特にインターネットを通して外の世界とつながっているソフトウエアは,悪意のあるユーザーが適切な脆弱性を見つけるのを待っているIT版の時限爆弾のようなものだ,ということを熟知していると思う。しかし一歩下がって,この問題を広い視野から見渡すと,他の厄介な兆候に気づく。例えば,あなたが一緒に作業するベンダーやパートナを信頼しても本当に大丈夫なのか,どのように判断すればいいのだろうか? 私たちのビジネスや私生活が,彼らの製品の信頼性と安全性にますます依存している現状を考慮すると,これはとりわけ重要なことである。いくつかの例を,以下に紹介しよう。

 かつては世界最大のPCメーカーとして君臨し,低コストで高速なPC製造の王者だったDellは先週,2002年から2006年までの同社の決算を修正する必要がある,と発表した。2年間に及ぶ米証券取引委員会(SEC)の調査と内部監査を経て,過去数年間にわたる不正が発覚したからだ。Dellでは,CEOのKevin Rollins氏が辞任し,同社の創業者であるMichael Dell氏が日々の業務を管理する職に復帰していた。Dell氏はカスタマの声に耳を傾けることで事態の打開を図り,ここ数カ月間,カスタマからの要望が最も多い事柄に次から次へと対処してきた。ここだけを聞くと,問題が解決したように思われるかもしれない。

 しかし,実際にはそうではなかった。複数のアナリストが今週,Dell氏も不正会計に関与していた可能性を示唆したのだ。なぜなら,彼は2004年度を通してCEOを務めていたからである。SECが調査の過程で,Dell氏から話を聞くことを求めるのは間違いないだろう。一方,市場占有率という観点から見ても,Dellは苦戦し続けている。

 偶然にも,DellからPCメーカーの王者の座を奪った企業も,彼ら自身の問題を抱えている。長い間Dellの低コスト戦略の被害を被ってきたHewlett-Packard(HP)は,王者の地位を確固たるものとし,ここ数カ月はさらに他社との差を広げている。直近の4半期の決算では,254億ドルの売り上げ,18億ドルの純益(前年比29パーセント増)を記録した。驚くべき数字である。

 しかしHPは現在も,同社が雇った調査員がジャーナリストやフィナンシャル・アナリストに理由を偽って電話をしたという,プリテキスティング(他人になりすまして,その人の個人情報を入手すること)スキャンダルに苦しめられている。さらに悪いことに,同社の幹部社員が通話記録を不正に入手して,役員やジャーナリストに対してスパイ行為を働いていたのだ。HPは自らの行為について謝罪したが,先週,同事件の当事者であるジャーナリストのうち4人が,同社に対して心理的,財政的損失の賠償を求める訴訟を起こすことを明らかにした。

 あのGoogleは,匿名の検索データを求める米国政府の要求をいとも簡単に拒絶したにもかかわらず,中国政府に対しては譲歩してでも上手くやっていこうと必死になっている。貴重なThinkPadブランドをLenovoに譲渡してPC市場から身を引いたIBMは,ユーザーの仕事を支援することより,高価なサービス・インフラを構築することに興味があるように見える。そして,Microsoftである。Redmondに本拠を置くこのソフトウエア界の巨人については,これまで様々な本が書かれてきた。私はここでは,「同社のSoftware Assurance (SA)スキームは,ライセンシ(ライセンスを受ける側)ではなくライセンサ(ライセンスを与える側)に若干傾いているように思える」とだけ言っておこう。

 それでは,誰を信用すればいいのだろうか? 実を言うと,筆者が今回例に挙げた企業のなかに,本質的に信頼できない企業はない。筆者はこれらの企業を相当尊敬している。しかし,セキュリティや問題意識,規制が高まっているこの時代,特にEnronやWorldcomなどの企業スキャンダルを考えると,自分に関係のある企業について知っておくことは,意義があるだろう。誰を信頼すればいいのだろうか?