KDDIが固定通信と携帯電話のブランドを一本化し,携帯/固定の両面でシームレスに利用できるFMCサービスの提供に乗り出す。固定系サービスの名称にも「au」を冠し,ポータル・サイトを統合するなどの動きに着手。携帯電話を起点とした次世代ネットワークの構築も進めている。

 小野寺正代表取締役社長兼会長が「固定通信と移動通信を持つ強みを出したい」とことあるごとに発言していたKDDI。この夏に本格的なFMC(fixed mobile convergence)サービスの提供に向けて動き出した。好調な携帯電話のブランド「au」を固定系サービスにも広げ,サービスをパソコンからもシームレスに利用可能にする戦略を明らかにした。

 その第一歩として同社のインターネット接続サービス「DION」の名称を「au one net」に変更。さらにはau携帯電話のインターネット・サービス「EZweb」のポータルと,携帯電話とパソコンの連動サイト「DUOGATE」ポータル,そしてDIONのポータルをすべてau oneに統合する。

 au oneでは携帯電話とパソコンのインタフェースを共通化し,端末の区別なくアプリケーションを利用できるFMCサービスを展開する(図1)。

図1●「au」ブランドの下でFMCサービスを推進する方針を打ち出したKDDI
図1●「au」ブランドの下でFMCサービスを推進する方針を打ち出したKDDI
携帯電話の機能やサービスをベースに,パソコンでも携帯電話でも利用できるFMCサービスを拡充する方針だ。

携帯を起点としたFMCを推進

 KDDIは2004年に固定系/携帯系を統合する次世代ネットワーク構想「ウルトラ3G」を公表した。ただし固定系と移動系のネットワーク統合を始めるのは2008年からで,具体的な取り組みはほとんど表に出してこなかった。

 こうした中,2007年3月に携帯と固定で分かれていたコンシューマ向けの事業本部を機能別に再編。そのトップに高橋誠取締役執行役員常務コンシューマ事業統轄本部長が就任し,FMC戦略を進めやすい体制を整えた。高橋本部長はau oneの発表の席上,「ようやく社内体制をまとめられた。サービス一体化のためにどうすればよいのか議論を重ねてきた」と打ち明けた。

 KDDIのFMC戦略は,携帯電話を起点としている点が特徴だ。高橋本部長は「携帯電話からのインターネット利用者がパソコンからの利用者を超えるなど,ネットの主流は携帯電話になっている。auユーザーが,携帯電話以外のKDDIのサービスに触れる機会を拡大するのが我々の戦略」と語る。

 具体的には,これまでDUOGATEが提供してきたと携帯電話とパソコンの連携サービスをさらに推し進める。携帯電話向けに提供しているショッピング・サイトや地図ナビゲーション,音楽配信サービスなどを,パソコンからでも同じようなイメージで利用できるようにしていく。

IDと課金情報の統合はこれから

 ただし完全なサービスの統合には,まだ時間がかかりそうだ。現状では固定系と携帯系ではID/パスワードが統合できていない部分が残っており,課金システムも別々のままだ。

 さらには「ひかりone」や「メタルプラス」といった固定系サービスについては,「今のところ,すぐさま“au”ブランドにしていく予定はない」(高橋本部長)という。まだ体制面で整理できていない部分もあるようだ。

 KDDIは2008年以降に本格化させるNGN(次世代ネットワーク)の構築でも,携帯電話を主役に据える考え。NTTグループが当初は固定系サービスだけでNGNの商用化を進めているのとは対照的な戦略でネットワークの将来像を描いている。