■中小ソフトハウスの経営者・経営陣の皆様に成長の壁を突破する方法をお話する第8回目は、中小ソフトハウスがビジネスモデル再構築時に意識すべき長所伸展法についてお話したいと思います。
私はこれまでセミナーや講演会を通じて、多くのソフトハウス経営者に次のような質問を投げかけてきました。「皆様の会社の強みは何ですか?」この質問に明確に回答できる社長に挙手をお願いすると、100名いても1名の手が挙がるかどうかの状態です。
そこで今回は「自社の強みは差別化ではない」という内容についてお届けします。
強みとは「その会社の強い部分」
「あなたの会社の強みは何ですか?」
この質問の後に、手を挙げた経営者にさらにお聞きします。
「その強みを社員全員にお聞きしても、全く同じ答えが返ってきますか?」
この質問まで投げかけると、ほとんどの経営者の手が下がってしまいます。この質問は、自社の強みが明確であり、社員に向けてその意味を浸透させていく仕組みを持っているかどうかがを見分けるための質問です。
ところで、強みとはどういう意味でしょう。これは引っ掛かりやすい問題です。多くの経営者にお聞きしていますが、その解答は100%こうです。「他社との差別化のポイントですよね」
どうですか。この解答で正しいと感じる方が多いのではないでしょうか。
それではまず、差別化について少し考えてみましょう。そもそも技術者を商品としている下請けソフトハウスにとって、他社より優れているポイントがどれだけあるでしょうか。これまで私がお聞きした強みのポイントの代表例は次のようなものです。
・最後まで仕事を投げ出さない
・難しいことも断らずにやり遂げる
・技術者の品質の高さ(客観的事実が無いケースがほとんど)
これが解答のトップ3ですが、そもそもこれらの要素は差別化として正しいでしょうか。強みをヒアリングすると、最終的には「弊社に強みはありません」という結論になる場合も多いのですが、果たしてこれも正しい解答でしょうか。
強みと差別化のポイントとは、必ずしもイコールではありません。では、強みとは何でしょうか。すごく単純です。「その会社の強い部分」です。無理問答をしている感じがしてきましたか。つまり、その会社が強いと実感している部分です。
強みを把握したら、伸ばす方向を決める
強み=その会社の長所です。船井総研流の経営の原理・原則に「長所伸展法」があります。その会社で強い商品や強い人財を徹底的に伸ばしていくという考え方です。特に企業が伸び悩んでいる場合や、業界全体がダウントレンドとなっている場合、この方法を採用するだけで短期的な業績向上につながります。
ただし、強みを実感するだけでは論理的ではないので、第7回でお話をしたように、自社のビジネスモデルを理解する一環として、強いと実感している部分を数値でフォローしておくことが重要です。
そのうえで、長所をどの方向に向かって伸ばしていくのかは、きっちりと決めておく必要があります。その方法として業種特化型、あるいはテーマ型という二軸に分けて考えていくことがポイントです。
ITはどの産業分野においても活用されるものです。それだけに適用範囲が広く、どの会社も強みを打ち出せていないのが現状です。支援先の経営者にも、しつこいくらいにお話しするのが、この絞り込みです。自社の経営資源をどこに集中するのか、それを決定する際に大切になるのが、この二軸です。
業種特化型かテーマ型かを決める際の基準ですが、次の発想を参考にして下さい。
・地域密着型を考えている場合 ⇒ 業種特化型
・全国展開のビジネスモデルを意識している場合 ⇒ テーマ型
業種特化はマーケットの有る無しが重要な指標となりまが、地域の中でまずは一番の領域を確定させたい場合には、業種で絞り込んでマーケティングを行う方が効率的です。
逆に全国に向けて販路を拡大できるような商品や仕組みを持っているのであれば、テーマ型でも通用します。ただし、テーマ型であっても業種別に水平展開を実施することです。やはり基本となるのは業種特化型ではないかと感じています。
その理由は簡単です。お客様との距離が近付くのが、業種特化型だからです。特に弱者の場合は、王道として顧客との距離は近い方が有利になります。より近接距離にお客様を感じることができれば、それだけ多くのことに気付けます。
まずは自社の強みを内部分析から見つけて下さい。そして、それを長所ととらえて下さい。次にその長所をどの方向性に伸ばしていくのか、フィールドを決定して下さい。その時には、なるべく顧客との距離が近いビジネスを選択することをお薦めします。
次回は、「お客様視点? でも本当は売り手視点」についてお話させていただきます。
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