サービス・プラットフォームの実際

 では,具体的な中身についてみていこう。サービス・プラットフォームは,ネットワーク制御基盤と,サービス提供基盤の二つから構成され,ITとネットワークの両者の技術を集約して実現される(図4)。

図4●ITとネットワークを融合させるサービス・プラットフォーム
図4●ITとネットワークを融合させるサービス・プラットフォーム
サービス・プラットフォームはネットワーク制御基盤とサービス提供基盤からなる。サービス提供基盤がネットワーク制御部分の複雑な処理を隠すことにより,簡単にネットワークの機能を利用できるようになる。
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 ネットワーク制御基盤は,上位サービスの実現のため,ネットワーク・インフラに対してセッション制御や呼制御,他網接続機能などにより通信経路を制御する。また,サービス提供基盤はさらに上位に対して,その複雑なサービス処理を隠ぺいし,ネットワークを制御可能なアプリケーション開発を容易にする機能を提供する。

 サービス・プラットフォームを活用した例として,互いの電話番号を秘匿したまま,ワンクリックで通話ができるサービスを紹介しよう(図5)。

図5●サービス・プラットフォームの適用例
図5●サービス・プラットフォームの適用例
電話とインターネットを連携させたWeb上での音声コミュニケーション・サービスが実現できる。
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 これは,Webアプリケーションと電話を連携したコミュニケーション・サービスの例で,コール・センターの窓口や,個人取り引き,コミュニティ・サイトなどでの活用が考えられる。サービスの実現に当たっては,アプリケーションからネットワーク処理を見えないようにするサービス・プラットフォームがあり,その中でネットワーク制御基盤が通話のための帯域保証や呼制御を行い,サービス提供基盤が加入者の認証,電話番号と加入者IDの変換などの役割を担う。2者間通話を確立するというネットワーク系の技術とWebからのサービスというIT系の技術を組み合わせた例である。

 次に,ネットワーク制御基盤とサービス提供基盤についてのより詳しい中身について,順に解説していく。

ネットワーク制御基盤とは

 NGNにおけるネットワーク制御機能は,3GPP/3GPP2で規定されたIMSMMDの規格を基本として提供される。IMS/MMDは元々移動体向けのネットワークを対象とした考え方であるが,IPベースのマルチメディア・サービスを携帯電話や無線LANなどの様々な端末に対してアクセス網に依存せずに提供することを可能にする。このようにNGNには,固定/移動に共通して適用できるアーキテクチャーが採用されており,アクセス手段によらないサービスを提供するための基盤,ならびにそれを構成するソフトウエアの役割がますます重要になってくる。

 ネットワーク制御基盤の中核となるセッション制御には,シンプルでかつ標準化されているSIPが採用されており,コネクションの設定や帯域を管理するSIP対応サーバーやCSCFなどのプラットフォーム・ノード群で構成される。要件としては,次の二つを満たす必要がある。

 1点目は,既存の回線交換ネットワークで提供されているサービスと同等なサービスをIPネットワークにおいても,確実,安全に,高い信頼性の下で提供すること。2点目は,これらのネットワーク・ノードを取り巻くインタフェースがオープンであり,かつ業界標準仕様に準拠していることである。

 前者についてNGNは既存の回線交換ネットワークと同等なライフラインとしての役目を果たす必要がある。これまで回線交換ネットワークでは,専用ハードウエア,専用ソフトウエアを一体化した一つの中核ノードで高信頼,高可用性を実現してきた。NGNのネットワークは,モビリティを考慮した複雑なネットワーク構成となるため,トランスポートも含めてネットワーク全体で高信頼性・高可用性を備える必要がある。また,耐障害性という点でも,障害の局所化・特定,高速切替えによるサービス停止時間の極小化などの高度な機能も要求される。

 後者については固定網,移動網双方に共通なアーキテクチャー上でサービスを構築していくために,既存網,他社網も含めて相互接続性や,業界標準への対応が必要である。具体的にはIMS/MMD標準に加え,ITU-T/TISPANのNGN標準にも対応していること,すなわちオープンなインタフェースをサポートしていることが必須要素となっている。また,標準仕様に従った実装だけでなく,各社,各ノード間での相互接続試験とその実績も重要となってくる。