船井総合研究所 チーフコンサルタント 斉藤 芳宜氏 斉藤 芳宜氏

船井総合研究所 チーフコンサルタント
NTTを経て、2004年に船井総研に入社。中小ソフトハウスを対象に「即時業績アップ」をテーマにしたコンサルティングを手掛ける。

 前回、説明したように、人不足という構造問題を抱える中小ソフトハウスは、人に依存しないビジネスモデルを探るべきである。前回の「受託開発を利用した権利ビジネス」に続き、二つ目のモデルとして「Webのポータルビジネス」を紹介したい。

 そもそも「ポータル」と聞くと、「今さら儲かるわけがない」と多くの人は考えるだろう。それは、ポータル単体で儲けようとするからである。

 マーケティング分野には、「集客商品(フロントエンド)と本命商品(バックエンド)を連携させて、儲ける仕組みを作る」という理論がある。これはWeb ビジネスにも通用する。フロントエンドがポータルなら、バックエンドは「企業間取引(=BtoBのECサイト)」だ。筆者はこれを「ツーサイト戦略」と名付け、提唱している。BtoBのECサイトは、受注した経験を持つソフトハウスなら取り組みやすいという利点もある。

 ポータルは、次の手順で構築する。(1)狙うべき業種をきっちりと絞る、(2)その業種の企業すべてをポータルに登録する、(3)利用者(エンドユーザー)がその業種サービスを比較・検討したり行動を起こせたりするコンテンツを用意する。これで完成だ。このサイトの目的は儲けることではなく、狙った業種企業とのパイプ作りである。

 例えば、狙いを「岩盤浴の運営業者」に絞ったとしよう。ポータルには浴場のイエローページのほか、岩盤浴の効用や正しい浴場の選び方、浴場の検索機能などのコンテンツを目玉にする。サイトの利用者が増えれば、サイトを経由して、岩盤浴場への問い合わせも自然と増えるはずだ。

 今はどんな企業も、見込み客をいかに集めるかに頭を悩ませている。ポータルに設けた、利用者を岩盤浴場に導く「見込み客集め」の仕組みが機能すれば、業者はこのポータルを歓迎するだろう。

 こうして狙いを定めた業種企業とのパイプができたら、BtoBのECサイトの出番だ。

 例えば、先ほどの岩盤浴のポータルには、浴場の運営業者の情報がどんどん集まってくる。すると、今度はその業者と取引したい企業が集まってくる。岩盤を販売する業者やタオル業者、清掃の代行業者など、さまざまな業者が岩盤浴の業者との接点を期待する。

 そこで、次は岩盤浴業者との取引を仲介するBtoBのECサイトを用意するのである。岩盤浴業者とは既に太いパイプがあるので、サイトが推薦する商品やサービスは取引が成立しやすいことが期待できる。このECサイトこそが儲けの源泉である。

 ここで注意すべきなのは、ソフトハウスはあくまでECサイトの運用(=取引の仲介)に徹し、不慣れな商品の仕入れや販売に手を出さないことだ。売り上げの数%を成功報酬にすることで、自社、利用する業者ともにリスクの少ないビジネスにする。これで人手を増やさずに稼げる仕組みが完成した。

 もちろん実際にはこう簡単に進まないことが多いし、障壁はいくらでも挙げられる。しかし「どうすればこのモデルを成功に導けるか」という発想で可能性を探ってほしい。変革できないソフトハウスとできるソフトハウスの違いは「ITを作っているだけ」と「ITをビジネスにも活用している」ことにあると筆者は考えている。