グローバル ナレッジ ネットワーク 横山 哲也


 「Windows Server Virtualization」(Hyper-Vに名称変更)は,Windows Server 2008, Enterprise Editionの一部として動作する次期仮想サーバー製品である。マイクロソフトが現在無償で公開している仮想サーバー製品「Virtual Server 2005 R2 SP1」と比べ,アーキテクチャを一新して機能とパフォーマンスの強化を図った。提供時期は,Windows Server 2008の出荷後180日以内となっている。

 現行のVirtual Server 2005 R2 SP1は,x86/x64の両ホストをサポートし,インテル,AMDのハードウエア仮想化支援機能をサポートするなど,以前の仮想化サーバー製品と比べて大きく機能が向上しているが,ホストOS(物理コンピュータ上のOS)のオーバーヘッドは依然として大きい。また,ゲスト・コンピュータ(仮想マシン)の64ビット・プロセッサやマルチプロセッサは,いまだにサポートされていない。

 これに対してWindows Server Virtualizationは,ホストOSのオーバーヘッドを最小限に抑えつつ,x64ゲストやマルチプロセッサ・ゲストに対応した意欲的な製品と言える。なお,Windows Server Virtualizationは現時点で入手できず,公開ベータ・テストもまだ始まっていない。本稿は,マイクロソフトのWebサイトや技術カンファレンスの内容と筆者の予想を基に構成していることをあらかじめお断りしておく。

ハイパーバイザーを搭載してパフォーマンス向上

 Windows Server Virtualizationの最も大きな変更点は,「ハイパーバイザー」と呼ぶ仕組みを導入した点にある。ハイパーバイザーは,物理的なハードウエアとOSの間にある,特殊なソフトウエア・レイヤーである(図1)。

図1●Windows Server Virtualizationの構造
図1●Windows Server Virtualizationの構造

 Virtual Server 2005はOS上の純粋なサービスとして動作しているため,すべての物理リソース(プロセッサやメモリーなど)の確保は,ホストとなるWindows Serverに依頼する必要がある(図2)。この構造は,既存のOSに手を加えなくてもよい半面,十分な性能が出ないという欠点があった。

図2●Virtual Server 2005の構造
図2●Virtual Server 2005の構造

 この問題を解決するためにハイパーバイザーが導入された。Windows Server Virtualizationは,ハイパーバイザー構造を持つマイクロソフトで最初の製品である。Windows Server Virtualizationのハイパーバイザーは,OSの機能のうち,プロセッサとメモリーの割り当て,およびゲスト間の通信機能だけを持つ。

 Windows Server Virtualizationのハイパーバイザーは,仮想マシンの管理に必要なすべての機能を備えているわけではない。ハイパーバイザーが管理しない領域については,「親パーティション」と呼ばれる特別な役割を持った仮想マシン上にWindows Server 2008をインストールする必要がある。例えば,ネットワーク・カードやハードディスク・ドライブなどの物理デバイスの管理は,親パーティションから行う。

 一般に,仮想マシンのオーバーヘッドはメモリー割り当てとプロセッサ割り当てが最も大きい。ハイパーバイザーは,このオーバーヘッドを最小化する仕組みである。