IT基盤の中核を占め始めた仮想化技術は,今後どう進化していくのか。

 ベンダー各社の声をまとめれば,IT基盤が目指す将来像は,ビジネス上の要件の変化に沿って,アプリケーションやサービスが自動的に必要なだけのコンピュータ資源を得られる環境。すなわち,IT基盤の「ユーティリティ化」である。

 ユーティリティ化に向けた技術的要素は大きく2つある。仮想化技術そのものと,仮想化したIT基盤の保守管理や資源配分といった作業を自動化する技術である(図5)。

図5●IT基盤構築技術の発展方向
図5●IT基盤構築技術の発展方向
IT基盤を仮想化する技術と,仮想化したIT基盤の管理や資源配分を自動化する技術が重要になる。

 仮想化ソフトは,複数のハードを束ねた仮想的なハード資源(リソース)である「リソース・プール」の実現を目指す。

 サーバーやネットワーク,ストレージといったハード資源をまとめたリソース・プールを作成し,そこから必要な分だけをアプリケーションに割り当てる。

 同一のハード同士,例えばIAサーバー同士ならば,この1~2年でヴイエムウェアや米バーチャルアイアン・ソフトウエアなどが,リソース・プールを実現してきている。今後は,異種の複数サーバーによるリソース・プールの実現がテーマだ。そこでは,ネットワークを介して複数のコンピュータを1台のコンピュータのように動作させるグリッド技術も必要になるだろう。

 一方,管理・自動化技術は,コンピュータが自律的に判断し,管理作業を実行できるように進化していく。アプリケーションの稼働率や応答時間といった指標の守るべき水準と,システム管理の方針を定めた「ポリシー」を定義し,そのポリシーに基づいてアプリケーションのサービス・レベルを調節する。

 日本ヒューレット・パッカードの小桧山淳一 マーケティング統括本部インフラストラクチャソリューション本部 担当部長は,「最終的にはデータベースのテーブルを自動的に拡張するといった具体的な修整作業を実行できるようにするのが目標」と話す。現在は,しきい値を設定するなどにより,管理作業をある程度まで自動化するにとどまっている。