3月25日、石川県の能登半島で最大震度6強の地震が発生。被災地域の企業や自治体は、情報システムを含む設備の被害状況や、社員の安否確認に追われた。幸いにも致命的なシステム被害は免れたが、固定/携帯電話が一時不通となり情報収集に手間取った。

 今回の地震の規模はマグニチュード6.9と、阪神・淡路大震災(7.3)や新潟県中越地震(6.8)に匹敵する。震源地近くにデータセンターが少なく、地震発生が日曜日だったことなどが幸いし、規模の割りに地場の企業の情報システムは致命的な被害を免れた。

 石川県や富山県を中心に支店を展開する北國銀行と北陸銀行は月曜日から通常通り営業。半導体製造の石川サンケンは震源地の近くに本社と5つの工場を持つが、「建物や設備、情報システムに致命的な損傷はなく、人的な被害もない」(広報担当)。能登空港も地震発生翌日から空港業務を再開した。「石川/富山両県の顧客の被害はいずれも軽微」(富士通 広報IR室)など、ITベンダー各社もシステム面の被害は小さかったと声をそろえる。

 ただ、課題も浮き彫りになった。情報システム部員を含む社員の安否や、店舗/工場の被害状況の確認作業に手間取ったのだ。

 携帯電話会社3社は、地震発生の直後から音声通話の発着信を大幅に規制した()。NTTドコモは石川県内からの発信を最大87.5%規制。KDDIも最大60%の発信規制を実施した。NTT西日本では、地震の発生直後から電話が集中したことで輻輳ふくそう状態となり、音声の発着信を最大60%規制したため地震発生から4時間近く電話が掛かりにくい状態が続いた。

表●3月25日に発生した能登半島地震による電話会社の通信サービスへの影響
表●3月25日に発生した能登半島地震による電話会社の通信サービスへの影響

 石川県庁の出先機関で、震源地に近い奥能登総合事務所では、「固定と携帯電話の両方ともつながりにくい状態が続き、職員の安否確認作業が難航した」(総務企画部企画振興課)。金沢市内にデータセンターを置く北國銀行は、保守要員として日本IBMの技術者が1人常駐していた。被害状況の確認に人手が足りないため、IBM金沢事業所に応援を要請したが、「電話が全然つながらなかった。何度もかけ直して、どうにか昼までに要員を確保できた」(北國銀行広報CSR課)。

 電話以外の連絡手段を用意していても万全ではない。ある製造メーカーは、電話やメールなど複数の連絡手段を組み合わせた「安否確認システム」を2年前から運用しているが、有効に機能しなかった。「訓練時には、社員の多くが自宅の電話を利用していた。電話が使えないため、代わりにメールで連絡しようにも、その方法が周知されていなかった」(担当者)ためだ。

 これらは、「複数の連絡手段を用意」した上で、「それらを使いこなせるようにしておくこと」の重要性を改めて示している。実際、職員の安否確認に手間取った奥能登総合事務所で、近隣の2市2町との連絡が問題なかったのは、この2条件を満たしていたからだ。一般の電話回線とは別に衛星電話を2回線導入しており、年1回の訓練で通話していたため、操作であわてることはなかったという。