筆者は先に,「Intelligent Application Gateway (IAG) 2007」を担当しているMicrosoftの「Security, Access, and Solutions Division(セキュリティ,アクセス,ソリューション部門)」による非常に長い説明会に参加した。IAG 2007は,Microsoftが2006年に買収したWhale Communications技術をベースとするリモート・アプリケーション・アクセス・アプライアンスである。

 IAG 2007はMicrosoftの名の下で販売される,このソフトウエアの最初のバージョンだ。今後のバージョンには「Microsoft Forefront」というブランドが誇らしげに記されて,おそらく今よりもMicrosoft色が濃くなるだろう。前ふりが長くなったが,今回は,企業におけるソフトウエアが「専門化(specialization)」の方向に向かっている現象を取り上げてみたいと思う。

 Microsoftが,同社のパートナーの関連サーバー・ハードウエアとしか連携できない企業向け製品を販売するのはもちろんIAGが初めてではない。IAGは,Windows Storage ServerやISA Serverといった有名な製品を,多くの場合アプライアンスという形で販売されるソリューションとして統合する(ただし,後者はソフトウエアのみの購入も可能だ)。ハードウエア・アプライアンスは,多くの場合ラックに設置して起動すれば,すぐに既存の環境に統合できるという意味で,ある種のプラグ・アンド・プレイ(PnP)機能を提供している。だが,最近広まっているこの種のデプロイメントは,本当に賢明なことなのか,筆者は疑問に感じざるを得ない。

 Windowsが,クライアントとサーバーの両面で進化してきた過程を考えてみてほしい。初期のWindowsバージョンは,中間市場というよりもむしろ市場全体を対象とした事実上の何でも屋だった。例えば,Betsy大叔母さんと,出張で飛び回っているCTOが,同じバージョンのWindows XPを使っていることも珍しくない。

 このことを踏まえて,「もっと効果的なソフトウエアの販売方法があるのではないか?」と主張する人もいるかもしれない。実を言うと,Microsoftがまさにこの主張をしているのだ。XPの後継であるWindows Vistaには,いくつかの異なる製品バージョンが用意されており,それぞれのバージョンが,非常に具体的なマーケットをターゲットにしている。同社は,Windows Server 2008でも同様の戦略をとっており,専門化されたServer Coreが製品群に追加される。

 皮肉なことに,専門化には煩雑さが伴う。非常に多くの異なるソフト/ハードを管理しなければならなくなるからだ。だが,「これらのシステムのユーザーが高度に専門化されたソリューション(ファイアウォールやアプリケーション・アクセス,ストレージなど)から得られる恩恵は,そうした煩雑さを補って余りあるだろう」という期待のもとに,専門化は進められている。しかしその一方でMicrosoftは,企業のIT資産を統合して簡素化する手段として,仮想化ソリューションを推奨しているのだ。

 ITの将来が,過去の汎用サーバーではなく,専門化されたソリューションであることは明白だと筆者は思う。汎用サーバーは,不必要なサービスを実行して,必要のないリソースを消費していることが多いからだ。仮想化されるべきもの(年々増加している)を仮想化することに加えて,私たちは中央の1カ所から,これらすべての専門化ソリューションを操れる管理ツールも必要としている。

 正直に言って,筆者はソフトウエアの専門化という流行について,まだ自分の考えが定まっていない。確かに,企業のサーバーやサービスは,変容するニーズに応えるために進化して,新しい技術を人目にさらす必要がある。だが,私たちは単に,ある煩雑なものを,別の煩雑なものを取り替えているだけではないのだろうか?