Lesson2の最後で,機器に設定されているMACアドレスの最初の24ビットは,ベンダーごとに割り当てられたOUIという部分と説明した。Lesson3では,MACアドレスが世界的に唯一になるために,OUIをどのように割り当てるのかを確認していこう。加えて,実際の保守・管理の場面におけるMACアドレスの活用方法を紹介する。

OUIはIEEEに登録する

 LANカードやルーターなどのネットワーク機器に設定するMACアドレスは,全世界で一意になるような割り当てのしくみがある。具体的には,IEEEがベンダーごとに重複しないOUIを割り当て,割り当てられたベンダーが後半の24ビットを製品ごとに重複しないように責任を持って割り当てることで,製品固有の番号となる。

 OUIはネットワーク製品を提供するベンダーがIEEEに申請し,お金を払って登録する図3-1)。OUIを一つ取得すると,後半の24ビット分である1677万7216個という膨大な数の製品に個別のMACアドレスを割り振れることになる。これをほとんど使い切ってしまったら,次のOUIを申請する。

図3-1●OUIはIEEEが管理する
図3-1●OUIはIEEEが管理する
OUIを取得したいベンダーはIEEEに申請書を送り,1650ドル支払って登録する。OUIはIEEEのWebサイトで検索できる。 [画像のクリックで拡大表示]

 ただし,現時点で複数のOUIを取得しているベンダーは米ゼロックスや米シスコシステムズなど一部。一つのOUIだけで足りているベンダーがほとんどだ。

 IEEEが割り当てたOUIはインターネットで検索できる。ここで,自分のパソコンに設定されているMACアドレスのOUIを検索してみよう。まず,IEEEの検索用ページにアクセスする。「Search for:」と書かれている入力スペースにOUIを入力し,その下のSearchというボタンをクリックする。すると検索結果を表示した画面が登場し,OUIを保有するベンダーがわかる。

トラブル時の原因特定に有効

 OUIの検索が役立つ場面としては,例えば,ルーターや端末の挙動がおかしいときなどが挙げられる。MACアドレスがわかれば,原因となっている機器を特定しやすくなる。前述の方法でOUIからベンダーを調べれば,どの機器に問題が生じているのかなど,だいたいのあたりをつけられる。

 また,ネットワーク機器に最初から固定で割り当てられているというMACアドレスの特徴を活用すれば,ネットワークの管理者にはいろいろ便利だ。大半のルーターはポートごとにMACアドレスが割り当てられているので,MACアドレスで不具合のあるポートがわかる。ポートを特定することにより,障害個所を切り分けやすくなるのだ。

DHCPや認証でも使われる

 トラブル時に利用する以外にも,MACアドレスはネットワーク管理のさまざまな場面で活用されている。ここでは,DHCP(dynamic host configuration protocol)やMACアドレス・フィルタリングでの使い方を見てみよう(図3-2)。

図3-2●ネットワーク管理でMACアドレスを活用する例
図3-2●ネットワーク管理でMACアドレスを活用する例
ネットワークの管理者はネットワーク管理にMACアドレスを利用することがある。例えば,(1)機器を特定する,(2)MACアドレスでフィルタリングして未登録の機器を接続させない,(3)DHCPでIPアドレスを機器に割り当てるときにMACアドレスを基にして毎回同じIPアドレスを割り当てる,といった用途がある。 [画像のクリックで拡大表示]

 DHCPはIPアドレスを端末に自動的に割り当てるためのプロトコルで,DHCPサーバーが端末の要求に応じて割り当てる。このとき,要求してきた端末のMACアドレスを見て,あらかじめMACアドレスごとに対応付けておいたIPアドレスを貸し出すことができる。

 もう一つのMACアドレス・フィルタリングでは,MACアドレスを基にして端末をネットワークに接続させるかどうかを判別する。登録していない端末を接続させないことで,ネットワークのセキュリティを高められる。

 これらの使い方を見ても,MACアドレスは端末を特定するための情報として利用されていることがわかる。ただし,MACアドレスで機器を特定するときには注意すべき点がある。これについては次のLesson4で説明しよう。