i.LINKムーブは魅力半減、アナログコピーは回数制限なし!?

 総務省の諮問機関である情報通信審議会は、コピーワンス見直しの答申をとりまとめて、8月2日に総務省に提出した。これがいわゆる「コピー10」である(「コピー9回+ムーブ1回」で「コピー9」などとも呼ばれているが、この特集では「ムーブ1回」も含めてコピー10と仮称することにしよう)。

 コピー10は“テレビ録画界の憲法改正”とも言え、録画ライフに大きな変化をもたらすと予想される。待望の緩和策であるだけに、録画機のユーザーとしては期待と不安が交錯した心持ちだと思う。このため、ネットなどで多くの議論が交わされているが、放送規格に関わる内容であるためその実像は意外に知られておらず、事実に基づいた議論がされていないのが実情だろう。

 そこで賛否の判断の前に、まずコピー10では「何ができて、何ができない」のか? 録画ライフはどう変わるのかをQ&Aで具体的に検証してみたい。JEITA(社団法人 電子情報技術産業協会 )の田胡修一氏に録画機ユーザーの立場から質問をして、来るべきコピー10録画時代の実像に迫ってみよう。田胡氏は、JEITAのコンテンツ保護検討委員会の委員長を務めるキーパーソンである。

 忙しい人はQ&Aだけを飛ばし読みしても、コピー10の概要は分かるだろう。さらに理解したい人は「★さらに詳しく!」を参照するとより深く理解できるかもしれない。なお、回答の内容や筆者の推測は、情報通信審議会の答申に基づくJEITAとしての意見であり、実際の施行時に変更される可能性があることを申し添えておく。


Q: コピー10の現状と仕組みはどのようになっているのでしょうか。

社団法人電子情報技術産業協会 コンテンツ保護検討委員会 委員長の田胡修一氏
●社団法人電子情報技術産業協会 コンテンツ保護検討委員会 委員長の田胡修一氏
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A: 「情報通信審議会では、8月2日にコピーワンス見直しの答申をとりまとめました。審議には、消費者代表とメーカー、権利者団体、放送通信事業者などが参加しています。この答申を尊重してARIB(社団法人電波産業会)やDpa(デジタル放送推進協会)が実際の放送運用規定を決め、民間の放送事業者が運用方法を選択準備するなどの作業が残っています。また、メーカーも対応器機を新たに開発する必要があります。というように具体策としては未確定な部分もありますが、今回の答申で方向性と基本ルールは定まったと言えます。

 今回のコピーワンス見直しについて、答申では『COGステータス(状態)でHDDにストア(保存)する』ことを前提条件にしています。COG(Copy One Generation)とは、いわゆるコピーワンスのことで、コピーワンスの状態でレコーダーのHDDに記録することを指しています。簡単に言うと『HDDを起点にして、もう一度コピーワンス録画できるように緩和しよう、だたし回数はコピー9回と最後の移動1回に制限する』ということです」(田胡氏)


 今ひとつ分かりにくいという人のために補足しておこう。コピーワンスとは「“一回のみ”コピーできる」と理解されがちだが、これは間違いで、COGの「Generation」という言葉通り「“一世代のみ”コピーできる」が正解だ。オリジナルからコピーすると一世代とカウントされるため、放送局からレコーダーへ録画することが「一世代」になる。

 「レコーダーには一度しか録画できないじゃないか」と思う方もいるだろう。だがダブルチューナーを搭載した録画機なら同じ番組を同時に2つ録画できるし、理論的には無限数のレコーダーを用意すれば、同じ番組を無限数録画できることになる。つまり”世代内での数の制限はない”のである。

 今までのコピーワンスでは、放送局からレコーダーHDDへの録画でコピーワンスのチケット(権利)を使う。チケットを使ってしまったので、HDDに録画した番組は、これ以上コピー禁止(ノーモアコピー)状態になり、ムーブ(移動)のみ可能になる仕組みだ。

現行の「コピーワンス」では、レコーダーのHDDに記録した段階で「これ以上コピー禁止」になる。HDDからi.LINK接続機器への「ムーブ」は可能だが、アナログ接続でのコピーは不可
●現行の「コピーワンス」では、レコーダーのHDDに記録した段階で「これ以上コピー禁止」になる。HDDからi.LINK接続機器への「ムーブ」は可能だが、アナログ接続でのコピーは不可
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「コピー10」の場合は「個数制限コピー可」でレコーダーのHDDに記録し、そこからデジタル接続で10回までコピーが可能(最後は消去されるため「ムーブ」となる)。アナログ接続の場合は回数制限なしでコピーが可能になる
●「コピー10」の場合は「個数制限コピー可」でレコーダーのHDDに記録し、そこからデジタル接続で10回までコピーが可能(最後は消去されるため「ムーブ」となる)。アナログ接続の場合は回数制限なしでコピーが可能になる
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