コンピュータはある種の処理には非常に高度な能力を発揮する。テキストのパターンマッチングもその一つである。正規表現のインタプリタからキーワード・ベースのアンチスパム・フィルタまで,様々なパターンマッチング・ベースのアプリケーションが世に送り出されている。

 一方,メッセージをその内容に基づいて確実に分類するために必要な,言語的なテキスト分析は,依然として得意分野とは言えない。一般に「メッセージ分類」と言えば,メッセージに対してその内容の性質を表すマークを付ける(マーキングする)処理を指す。このマーキングは,ユーザーに公開または非公開にできる。また,マーキングの判断基準として,標準化された分類セット(米国政府の機密資料の分類スキームなど)や特定の企業または産業向けに定義されたカスタム分類セットを使うことができる。

 市場には数多くの自動メッセージ分類システムが出回っているが,その多くは特定の環境向けに最適化されている。例えば,Lockheed Martinは,米国海軍向けの自動メッセージ分類システム「RADIANT MERCURY」システムを構築したが,このシステムを民生用に使うことはできない(適さない)。このようなシステムは適用できる対象が多少限定される傾向があり,特定の構造またはフォーマットのメッセージしか扱えないものが多い。

 このような自動化されたシステム以外にも,様々なベンダーがMicrosoft Outlookのクライアントサイドのアドオンやその他のクライアントを開発しており,ユーザーが独自の分類マーキング方法を選べるようになっている(かつて筆者はEudora,Outlook 97,およびIBM Lotus Notes R4向けの自動メッセージ分類システムの開発に参加していた)。クライアントサイドで分類する場合,ユーザーが適切な分類を適用するのを忘れたり,または自らの意志で適用しない可能性があるという問題がある。

 以上のような制限があるにもかかわらず,依然としてメッセージ分類ツールに対する需要は旺盛である。ビジネス上の理由でメッセージ分類の適用が有効なケースは少なくない。例えば,メッセージに「弁護士/クライアント特権(A/C特権)」とマーキングする手段があれば,記録開示要求の対象にするメッセージと対象外にするメッセージを選別する際に非常に役に立つ。同じように,機密情報やアクセス制限されている情報が含まれるメッセージにマーキングできると便利だ(ただしマーキングするだけでは何の保護にもならないので,Windows Rights Management Servicesツールセットのようなソフトウエアが必須である)。

 Exchange Server 2007とOutlook 2007は,便利なメッセージ分類ツールとしても使用できる。Outlook 2007では分類定義ファイルをロードして,個々のメッセージに分類メニューから適切な分類を適用することができる。分類定義ファイルは非常に単純なXMLファイルであり,Exchange 2007サーバー上でProgram Files\Microsoft\Exchange Server\ScriptsディレクトリにあるExport-OutlookClassification.ps1スクリプトを使って生成する。生成した分類定義ファイルは,修正して,Outlookクライアントからアクセス可能な場所に配置する。この手順を実行しようとすると,Exchangeサーバーの管理シェルとクライアントのOutlookを切り替えて操作しなければならないので多少面倒である。できれば,今後のリリースではこの点を改善したツールをMicrosoftに提供してもらいたい。

 クライアントサイドの分類は単独では役に立たない。Exchange 2007では,トランスポート・ルールを使ってメッセージ分類を検査し,適用できる。例えば,「Project X」グループのメンバーから送信されたメッセージが「企業秘密」分類としてマーキングされていない場合,そのメッセージを配信不能として送信者に返すというトランスポート・ルールを作成できる。実際MicrosoftはExchange 2007のドキュメントで,法務関連の標準シナリオを取り上げてトランスポート・ルールの作成方法について説明している。それは,「法務」グループのメンバーから送信されたメッセージが「A/C特権」としてマーキングされていない場合に,そのメッセージを送信者に返すというものだ。

 トランスポート・ルールでメッセージを修正したり転送できれば,いろいろと興味深い使い方ができる。例えば,特定の分類にマーキングされている場合を除いて,特定の単語やフレーズが含まれるメッセージが外部の受信者宛に送信されたときに,その送信を拒否するというルールを作成できる。

 トランスポート・ルールは非常に柔軟性が高い。次回のこのコラムでは,やっかいな問題の解決にトランスポート・ルールが役立つシナリオについて説明する予定だ。