小宮山光雄氏
日本IBM 金融事業・金融クライアント IT推進 シニアITアーキテクト

写真●日本IBM 小宮山光雄氏
写真●日本IBM 小宮山光雄氏

 ITアーキテクトの仕事は大きく二つに分かれます。一つは,企業におけるビジネスと情報システムの環境を理解し,個別のニーズを満たしながら全体最適の視点で情報システムの構造を設計すること。具体的には,既存システムとの整合性を考え,データの構造と配置,プレゼンテーションや処理ロジックのあり方などを概念モデルとして設計します。ここでは利用部門のニーズやビジネスの狙い,将来の企業変革への柔軟性を考慮することが重要です。

 その上で,実装方式を考える。これが二つ目の仕事です。この段階では,システムに望まれる拡張性の要件やサービス・レベル,運用上の要件などを整理し,最適なハードウエアやミドルウエア,フレームワーク,開発言語,開発方法論などを決定します。実装方式はいくつかの選択肢を挙げ,関係者と議論しながら詰めていくことが重要だと考えています。


月に6~7冊の技術書を読む

 しかし,全体最適の視点でシステムの構造と実装方式を考えるのは,そう簡単ではありません。最近は経営やビジネスの環境が刻々と変わりますし,技術や製品も多様化してどの組み合わせがベストかの決断がとても難しい。自由度が高い仕事であるだけに,責務も重いわけです。

 そこで心がけているのは,常にニュートラルな視点でシステムを見ることです。自分がよいと思えば,IBM(自社)以外の製品も当然勧めます。そのため様々な製品や先進テクノロジのメリットやデメリットを自分なりに把握したりよく理解したりするようにしています。私の場合は月に6~7冊の技術書を読みます。また時間さえあれば製品や技術のセミナーに出席しています。技術が好きでなければ,とてもできない仕事でしょうね(笑)。

 最近の課題は,短納期開発,効果重視という要求への対応です。従来は時間やコストをかけてでも,よいシステムを構築するという風潮がありました。しかし,今はそれが許されない。そこで「アセット」と呼ぶ単位で既存のソフトウエア資産を流用したり,パッケージ・ソフトを組み合わせたりするなどの方法が重要になっています。現在はこの「再利用」に関する設計や実装の方法が最大の研究テーマになっています。(談)