◆今回の注目NEWS◆

◎重点計画2007(IT戦略本部、2007年7月26日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/070726honbun.pdf

【ニュースの概要】IT戦略本部は、「IT新改革戦略」「IT新改革戦略 政策パッケージ」に掲げられた目標を実現するための「重点計画2007」を策定・公表した。


◆このNEWSのツボ◆

 2006年に発表された「IT新改革戦略」に基づく年度別重点計画の第2弾である、「重点計画2007」が策定された。政府は今年の4月、「IT新改革戦略 政策パッケージ」として政府のIT政策に関する基本的な方向性を取りまとめたが、「重点計画2007」はこれに続くものであり、来年度予算策定に向けての具体的なメニューを示すものである。全体で191ページにも及ぶ大部の資料となっている。

 しかし、正直に言えば、「各省庁の来年度予算要求を綴じ合わせたもの」という印象を拭えない。このような感想を抱くのは筆者だけであろうか。

 4月に公表された政策パッケージでは、「効率性・生産性の向上」「健全で安心できる社会の実現」「創造的発展基盤の整備」という三つの柱で施策を整理し、その中には「電子私書箱の創設」や「世界に先駆けた安全運転支援システム」など、それなりに興味を引く項目も掲げられていた。

 ただ、今回の「重点計画」は、この政策パッケージを具体化する…という視点からすると、あまりに総花的であり、かえって「重点」が見えなくなっている。そのうえ、全体では「IT」という言葉が並べられているのに、産業の強化のところだけは「ICT産業」という用語が用いられているところなどは、各省庁の縄張り意識が、そのまま持ち込まれているという感じさえする。

 振り返ってみれば、2000年のIT戦略本部の創設以来、「3~5年をカバーする大きな方針」→「政策面での具体的な柱を示したパッケージ」→「各年の予算や法律への反映を示した重点計画」という基本的な構造で政策が提示されてきた。しかし、すべての政策においてITの利用が当たり前の状態になってきた今日、果たして、こういった進め方が、政府としての「骨太な方向性」を示す上で適切かどうかは再考する必要があるのではないだろうか。日々のニュースで頻繁に言及されている、社会保険庁のシステムに関する改革や改善の方向性は、重点計画のどこにも示されてはいない。これでは、「最も肝要な部分は別に定めた計画」だと思われても仕方ないのではないだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。