「システムはね、念ずればできるんだよ」。そう言って笑うのはイオンクレジットサービスの常務 情報システム本部長の清永崇司さんだ。2001年にイオンからイオンクレジットに転籍した時の情報部門は10人程度。今では200人まで増えた。
2004年には第3次の大型開発が完成しCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)も稼動を始めた。このCRMは、イオン時代からの20 年来の悲願だった。グループ横断で商品と顧客属性を組み合わせたデータベースをつくる。イオンのような小売りや流通に長けている会社では、100億円かかる店舗出店の決定は早い。判断材料が豊富にあるからだ。しかし、50億円のこのCRMにはなかなかGOが出なかった。
CRMは使う人の技術が向上しないと、本当のROI(投下資本利益率)は実現しない。「5年待ってほしい、必ずリターンが出る」とシステム部門一丸となって森社長に直言した。小売業でのCRMの効果は多岐にわたる。1)店舗への送客、2)新規加盟店開発、3)貸し倒れ分析、4)マーチャンダイジングなどだ。クレジット会社の場合は、途上与信にも寄与する。顧客の利用状況を数年分析し限度額の上げ下げを決定する。そんな直接効果のほかに、約定日に落ちない口座に対する対応方法というような間接的な仕事も視野に入る。
例えば、約定日に落ちない口座のお客様の25%が本来は督促なしに支払いをしてくれるとしよう。現在は100%のお客様に電話や手紙で対応をしているが、25%の人たちには本来は何の対応も必要ない。CRMで分析ができれば、その分の電話や手紙のコストが削減できるし、お客様も気持ちよくクレジットを使っていただける。顧客満足度も上がるはず。リターンはコスト削減効果だけではない。実はシステムの1か0かでなく、こんな現場よりで繊細な対応が部門全体の目標だ。
清永さんは、どんな難しいことでも目標が明白であれば実行可能だと考えている。それは、流通業の歴史の中で「こう」作りたいという思いが脈々と受け継がれてきた結果の目標だ。現場にいた時は毎日500kmを車で走った。現場で培った感覚が今では全社の歴史になっている。清永さんが「念ずれば」と言ったのは、この歴史の集積だった。それをシステムで成し遂げたいと思ったのだ。
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