携帯電話の値下げ競争が激化してきた。基本料980円のホワイトプランが好調なソフトバンクモバイルを横目に,NTTドコモとKDDIが基本料の大幅な値下げに踏み切った。両社は数百億円規模の減収を見込むが,さらなる値下げの含みを残している。

 6月末から7月にかけてNTTドコモとKDDIが,相次いで基本料の新割引プランを打ち出した(図1)。

図1●携帯電話の基本料を巡り,NTTドコモとKDDIが値下げ合戦を繰り広げている
図1●携帯電話の基本料を巡り,NTTドコモとKDDIが値下げ合戦を繰り広げている
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 まずNTTドコモが6月末に,基本料割引サービスを発表。KDDIがすかさず対抗し,2年間の継続利用を条件に誰でも1年目から基本料を一律半額にする「誰でも割」を発表した。「ユーザーの流出を防ぐ意味でも,NTTドコモにはきちんと対抗する必要があった」とKDDIの小野寺正社長兼会長は狙いを説明していた。

 これに対してNTTドコモは,7月下旬に再度値下げを断行。KDDIと同様に,契約1年目から基本料を一律50%引くプランを投入する。NTTドコモの中村維夫社長は「KDDIに対抗するためにも割引率を再び改定せざるを得ない」と競争を受けてたった理由を語る。

実はソフトバンクモバイルを意識

 値下げ合戦は表面上はNTTドコモとKDDIのつばぜり合いに見えるが,両社は少なからずソフトバンクモバイルのホワイトプランを意識しているだろう。同プランの基本料は980円で,時間帯に制約はあるが加入者同士が話し放題となる音声定額を実現している。

 ただしドコモとKDDIは,ホワイトプランに直接対決を挑む考えはないようだ。KDDIの小野寺社長が,誰でも割について「ドコモへの対抗策であり,ソフトバンクモバイルを意識した施策ではない」と話したのも,ホワイトプランとは異なる割引形態を取っているからだ。

 ソフトバンクモバイルは,ホワイトプランを原動力として5月と6月の携帯電話加入者の純増数で首位となっている。ドコモとKDDIからすると,音声定額の導入は難しくても,基本料の部分で割安感を出す必要性を迫られたと考えてもおかしくない。

 NTTドコモの中村社長の口からは,ホワイトプランを意識した発言も飛び出した。「ドコモの一番安いプランで今回の割引を導入すれば基本料は1800円だ。無料通話分1000円をフルに使えば,基本料が実質800円となる。980円のホワイトプランとそこそこ戦えるのではないか」(中村社長)。

 今回の値下げによる収益への影響は,NTTドコモが約400億円でKDDIが約200億円。どちらも「通期の業績予想には折り込み済みの数字で,今回の値下げによる業績予想への影響はない」とするが,決して小額ではない。基本料の値下げというパンドラの箱を開けてしまったようにも見える。

 値下げによる減収分をどの程度まで折り込んでいるのかについては,NTTドコモもKDDIも「競争上答えられない」と口をそろえる。さらなる値下げの可能性に含みを持たせた格好だ。今のところ両社の割引率は一律50%であるため,均衡は保たれている。