テクノロジー・リーダー向けサイト「Enterprise Platform」は、複数の雑誌やWebサイトの記者達によって作られている。会議室や電子メール上で常時行われている、担当記者と編集長のやり取りを公開する。今回は「Excelレガシー問題」を報道している菅井光浩記者(日経コンピュータ編集部所属)との対話である。


S 日経コンピュータ編集部に異動して初めて書いた特集記事「“Excelレガシー”再生計画」はおかげさまで、読者から非常に高い評価を受けました。日経コンピュータ読者の方々の意見をまとめた調査結果が出たのです。

Y 調査結果が自分に都合のいい場合、腹の中で「やった!」と思いつつ、表面上は謙虚に受け止めておく。自分に都合の悪い結果だったら無視する。これが僕のポリシーなので、「よかったね」とは言わない。それより日経コンピュータ編集長のところにこういう手紙が来たんだけれど。

S 抗議か何かですか。

Y 違うけどそうかな。

S とりあえず拝見します。Excelを使ったシステム開発を専門に手掛けている会社からですね。Excelレガシーという企画自体は誉めてくださっていますが。

Y 僕の性格が悪いからかもしれないが、手紙の行間から「ぜひ取材して欲しかった」という先方の気持ちが読みとれるけれど。

S どうしましょう。

Y 行くに決まっているでしょ。先方に連絡して下さい。あのさ、「“Excelレガシー”再生計画」の特集ができあがった時、言おうと思っていたことがあるのだけれど。本来、打ち上げをやってその場で話せばよかったんだが、僕が禁酒してしまったからねえ。

S 何でしょう。

Y 日経コンピュータ編集部に来てまもない時期に取り組んだ企画だし、直前に別の仕事もあったようだから、やむを得ないところもあったと思うが、はっきり言って取材が十二分とは言えなかったなあ。十を取材して十を書いたという感じでしょう。本来は二十取材して十書くというくらいでないといい記事にならない。

S システム開発の話だったので、日経SYSTEMS出身の僕としては、勝手知ったるところと思っていたのです。ところが、Excelのシステム構築に関して案外、取材先や事例の蓄積がなかったもので。

Y 蓄積で勝負するのはまだ早い。基本的に記者は足で勝負しないと。雑誌が出てから思いついたんだが、インターネットの検索エンジンに「Excel システム開発」と入れてみると、色々な会社が出てくる。編集長に手紙を送ってきた会社は先頭に出るね。こういった会社は一通り回ったほうがよかった。

S インターネットについて言いますと、記事を掲載した日経コンピュータが出てから、記事について意見を書いてくれたブログがあったのですが。スプレッド統制研究室というところです。

Y ううむ。これも気付いてよかったんじゃないの。スプレッドシート統制の話に偏らないようにして、と注文したけれど。しかし検索エンジンといい、ブログといい、世の中変わったねえ。最後は足の勝負としても、取材先を格段に見つけやすくなったのではなかろうか。

S 「読者10人と考えたExcelレガシー再生への道」なんて企画は、昔でしたら絶対できませんものね。

Y 手紙でやれたかもしれないが、まあ無理か。ともかく記事は好評だったわけだから、日経コンピュータで継続的にExcelレガシーについて取り上げるべきだと思う。とはいえ、すぐにまた紙でやるわけにはいかない。その間、Webでしっかり報道すべきでしょう。そのためにITpro上の「Excelレガシー再生計画」というコーナーも作ったわけだし。最近更新されていないような気がするが。

S 次の特集の取材が始まってしまいまして...。

Y 紙を書いてからWebを書くという順番に問題がある。日々の取材結果をどんどんWebに公開していって、最後に紙の原稿がまとまるというほうがやりやすいでしょう。記事に反応してくださった方に会いに行って、Webで発信するところからやってはどうか。それから今思いついたが、Excelレガシー問題を考えるセミナーもやってはどうか。Webもいいが、やはり実際に肉声でコミュニケーションすることは大事だから。10月半ばくらいにやる方向感で、セミナーを企画してくれたまえ。

S ・・・。分かりました。あの、一ついいですか。ご指摘は逐一ごもっともなのですが、Excelレガシー特集の取材中、担当デスク(記者の相談に乗り、原稿を査読する人)だったYさんに相談しようと思ってもまったく会えなくてかなり困ったのです。編集部にほとんどいないし、携帯電話を持っていないから連絡もとれないし。

Y 電子メールがあるじゃないか。P2PソフトのGrooveというものもある。記者や編集者は外に出て人に会うのが仕事。社内で顔を突き合わせて相談しても、人に会っていないと、ろくな案は出てこない。などと言っていると呆れられるな。予定は電子掲示板に入れてありますから、会いたい時は勝手に僕の予定をとって下さい。