テクノロジー・リーダー向けサイト「Enterprise Platform」は、複数の雑誌やWebサイトの記者達によって作られている。会議室や電子メール上で常時行われている、担当記者と編集長のやり取りを公開していく。今回は,Enterprise Platformの「実質的」編集責任者である高下義弘と、「形式的編集長」谷島宣之の議論を掲載する。テーマは,Google Docs & Spreadsheetsの利用についてである。


Y T君、「使い出したら止められない、Google Docs & Spreadsheets」を読んだよ。人が夏休みをとっている間に、「グーグルをろくに使ったこともない人の批判は説得力に欠ける」などと、威勢のいいことを書いていたが。

T いや、まあ、その、つい日頃から思っていたことを書いてしまいまして。

Y 僕は寛大だからその程度のことでは怒らない。グーグルなんとかを使わず、Officeをほとんど使わず、携帯電話を持たなくても、ITの記事は書ける。

T (小声で)そういうことを威張って言わなくても。

Y 何か言った?それより、あの記事には論理不整合があるね。

T え、どこですか。

Y 「最終的に雑誌やWebに掲載する原稿そのものはGoogle Docs & Spreadsheetsに書き込まず,テキスト・エディタやExcelを利用している」と書いているでしょう。Excelで原稿を書くというところでもうついて行けないがそれはさておき、とにかく原稿のデータは、グーグルのサーバーではなくて、会社か自宅のPCか、あるいは持って歩いているノートPCの中にあるわけだ。

 もう少し記事を読んでいくと、複数のパソコンの間でデータを共有するために使っていた「手元のUSBメモリーにはほとんどデータが入っていない,という不思議な状況になっている」という一文が出てくる。つまり、君はメモばかりとっていて、まともな原稿を書いていないことになってしまう。

 最終的な原稿までグーグルで共有しているか、あるいはUSBメモリーに入れているか、どっちかでしょう。たぶん後者だと思うのだが、記事を面白くしようとして筆が滑ったのではないか。

T いえ、自宅で仕事はしない主義なので。つまり仕事の原稿は、会社のデスクトップに入っています。

Y それなら、グーグルにメモをおいて、外や家で開く必要はないではないの。

T うーん,絡みますね。夏休みをとってから出社すると、かえって機嫌が悪くなるというのは、仕事中毒の末期では。

 最終的な原稿は、会社のパソコンで書いています。グーグルには載せません。ただし、本格的な記事は書かないまでも,思いついたネタを書き込んだり,たまたま自宅のパソコンで見たWebニュースの中に気になったものがあった場合、メモをとったりしています。

Y それは立派な仕事ではないかね。

T 自宅で仕事をしない主義ではありますが,そうはいっても仕事に絡むことをついついしてしまう自分が悲しいです。そういえば12年前になりますか、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの創設者であるニコラス・ネグロポンテ氏が「ビーイング・デジタル―ビットの時代」という著書でこう書いていました。「ネットは仕事と私生活の境界線をますます曖昧にしていく」と。

 彼の“読み”通りになっていますね,私は。Yさんも同じでしょうから、グーグルを使うといいですよ。

Y 確かに、家にいても、記事のネタをついつい考えてしまう。ただし、思いついたことは紙切れに手書きしているから、やっぱりグーグルはいらないな。だいたい、パソコンを動かすまでにメモしようと思ったことを忘れてしまうね。