オープンソース・ソフトの勢いに陰りが見え始めた。調査会社の日経マーケット・アクセスが2006年2月に公開したユーザー企業へのアンケートによると,全体の50.6%の企業が,「オープンソース・ソフトを利用する予定はない」と答えている。1年前の同じ調査では,「利用する予定がない」と答えた企業は39.3%だったから,全体の1割以上がオープンソースへの関心をなくしたことになる。

 同様の傾向は他の調査でも表れている。調査会社のガートナー ジャパンによれば,オープンソース・ソフトで最も代表的なLinuxの,サーバーOS市場での成長が鈍化し始めた。2006年のシェアは市場全体の約20%になりそうだが,08年に25%程度に達するとその後は横ばいになる見込みだ。Linux関連製品を販売するターボリナックスの矢野広一代表取締役社長兼CEOは,「企業の情報システム部門で広まっているオープンソースへの失望感を反映したもの」と危機意識を持つ。

 オープンソースはソース・コードを公開しており,一定の条件を満たせば自由に利用・改善できる。商用ソフトよりも安価で,特定ベンダーに依存せずにシステムを開発できるという期待があった。

 だが実際には,企業が長期間にわたって使い続けるには,さまざまな有償サポートが必要になる。事前の動作検証やソフトの品質改善を,コミュニティに任せるのは難しい。

 そのギャップをベンダーが埋めている。有償サポートを提供する米レッドハットの技術者は,「我々の活動はわき水をボトルに詰めて家庭に届けるようなものだ」と説明する。だが,そのサービス内容に不満を持つ企業もいる。

 果たして今,オープンソースの世界で何が起きており,企業はどう付き合っていくべきなのかを探った。

Part1 重くのしかかるサポート
Part2 より強まるベンダーの関与
Part3 参加する企業をコミュニティは歓迎
Part4 主体的に使いこなすことが解