日経BPコンサルティング
チーフ・コンサルタント 古賀雅隆
シニア・コンサルタント 中田吉彦

 第21回参議院議員選挙は民主党の圧勝で終わった。Webサイトの使い方のうち、検索エンジン対策が一番うまかったのも民主党だった(表1)。検索エンジン対策とは、Yahooやgoogleなどの検索サイトで、いかに上位に表示させるか、そこから自分のサイトへいかにうまく引きこむかという対策のことだ。選挙運動にもインターネットの影響はどんどん大きくなってきている。サイト活用の巧拙と、選挙の結果との因果関係はわかっていないが、Webサイトの使い方次第で選挙の結果が変わってしまう時代も遠くないだろう。各党のWebサイト対策から参院選を眺めてみた。

表1●各政党の検索エンジン対策実施度(7月12日と7月28日のポイント比較)
政党7月12日7月28日
自民党6.06.8+0.8
民主党7.88.8+1.0
公明党6.67.1+0.5
社民党4.05.5+1.5
共産党6.18.4+2.3
国民新党6.57.3+0.8
新党日本5.55.5±0.0

 選挙の勝敗には、各政党が掲げる政策、マニフェストが大きく関わるのはもちろんだ。それ以上にマニフェストの内容が国民に届くかどうかが大きなポイントだと言えるかもしれない。そもそもアピールしたい内容が国民に広く伝わらなければ効果がない。つまり政党のWebサイトでも、企業がWebをマーケティングおよびブランディングへ活用するのと、まったく同じ考え方が成り立つ。だから選挙運動とWebサイトの活用方法の間には密接な関係が成り立つと考えられる。Webサイトが選挙にも重要と考えられる理由だ。

 主要政党では、政策やマニフェストをWebサイト上で閲覧できるようにしている。そこで、各政党のWebサイトが、各党の政策やマニフェストを見たいインターネットユーザーを該当ページに引きこめるかどうか、すなわち検索エンジンへの最適化(SEO)と入り口ページの最適化(LPO)の視点からWebサイトを分析した。分析対象は今回議席を得た主要7政党とした。

政党名で検索…「目的の政党ページなのかどうか分からない」

 分析は、公示日の7月12日および投票日直前の28日に、実際にYahooとGoogleでキーワード検索を行い、その検索結果をチェックした。詳細な分析内容と結果は表2に示した。

表2●第21回参院選 政党サイト SEO-LPO 横並び診断。クリックするとPDFファイル(179KB)をダウンロードできます

 政党名をキーワードに使うと、全て政党のWebサイトが、YahooでもGoogleでも上位に表示された。しかし特にGoogleで表示される説明文が不十分な政党が多かった。現状のままでは、政党名をキーワードにして検索エンジンを使い、Webサイトが表示されたとしても、いったいどんな内容が表示されるのか、予測がつきにくいということになりかねない。政党のトップページなのか、それとも別のページなのかもよく分からないことも起こり得る。

 検索結果の説明文はSnippet(スニペット)と呼ばれ、図1のように、Googleでは検索に使ったキーワードが、コンテンツページ内で使われている個所周辺のテキストが引用されることが多い。検索エンジンの利用者はSnippetを見て、提示されたページの内容が何かを判断する。だからSnippetの内容が的確であれば、ネットユーザーをページに引きこむ、つまり検索結果をクリックさせて、各政党の該当ページを表示させることができる。

図1●各政党のSnippetの例

 しかし現状は、例を見ても分かるように、どんなページなのかが何となく推測できても、政党のWebサイトのトップページであることが明確に分かる例はほとんどなかった。

最悪!「前回選挙のマニフェストが出てきた」

 同じことが、例えば今回の選挙の争点のひとつと位置づけられている年金問題やマニフェストについて知りたいと思った場合にも当てはまった。検索エンジンの利用者は「政党名+キーワード」と入力するだろう。例えば「政党名+年金」では年金問題に対する政策や考え方を書いたページではなく、関連ニュースのページが提示されてしまうケースや、せっかく該当するページが存在しても、検索結果の10位以内に表示されなかったりするケースも目立った。

 Googleでは通常、検索結果は1ページに10件表示される。今回の選挙で掲げるキャッチフレーズも、検索結果の10位以内に表示されない政党が多かった。主要政党のWebサイトでは、検索エンジン対策が十分にできていないことがよく分かる。

 あるケースでは、以前の選挙時点でのマニフェストのページが提示されてしまった。前回の選挙の際のマニフェストがそのまま残り、上位に表示されたら有権者はどう思うだろう。言いっぱなしで、選挙が終わったら責任放棄か、という印象を持たれかねないのではないだろうか。「マニフェストは選挙対策に過ぎない」を追認してもらうようなものだ。選挙期間中にこの状態は最悪と言えよう。これらの不都合はいずれも、検索結果の表示への配慮、的確なキーワード設定など、検索エンジンへの最適化対策を講じていなかったために生じている。

重要なのは検索結果だけでもページの内容が推測できること

 図2に示した公明党のサイトは手を打って成功しているケース。これを見ると、検索結果のSnippetの第一行目に「公明党2007参院選特集のwebサイトです」と書かれている。これはトップページのメタタグと呼ばれるコードのひとつ「descrption(ディスクリプション)」と呼ばれる部分に、検索エンジンを意識してその文言を入れているからである。さらにメタタグの「keywords(キーワード)」部分にも「公明党,参院選,選挙」の文字が見えるように、来訪させたいターゲットが検索の際に使いそうな言葉を設定しておくのも有効だ。

図2●descriptionが反映される検索エンジンへの表示

 ただしkeywordsがあまり多すぎてはいけない。せいぜい5~6個が望ましい。またkeywordsはサイト全体で掲載されている内容ではなく、該当ページの掲載内容に絞らなくてはならない。検索エンジンでヒットするのは1ページだけだからだ。

 こういったメタタグへの配慮が、検索エンジン対策への第一歩となる。