2008年4月からの適用まで8カ月を切る中で、中堅・中小企業向けを掲げる日本版SOX法(J-SOX)対応の支援サービスが増えている。文書化作業を中心に、期間や内容、価格を明示し、「早く、安く」を強調する。ただし、ユーザー企業が自力で取り組むのが前提だ。

 中堅・中小企業向けを銘打って日本版SOX法(J-SOX)対応支援サービスを提供するのは、IDSシェアー・ジャパン、大塚商会、キヤノンソフトウェアら。いずれも、J-SOX対応における監査時に必要な文書の作成支援がサービスの中心だ()。

表●中堅企業を対象にするJ-SOX 対応サービスの例
表●中堅企業を対象にするJ-SOX 対応サービスの例
[画像のクリックで拡大表示]

 各社が主要顧客に見込むのは、売上高1000億円未満の上場企業および上場企業の連結会社。なかでも「J-SOX対応の専門チームを作ったが、具体的な対策の立案には未着手」といった状況の企業である。

 J-SOX対応支援サービスは、これまでも多数提供されている。それらサービスと比べ、今回登場した中堅・中小企業向けサービスが大きく異なるのは、サービス内容や提供期間、価格を明示している点だ。例えば、IDSシェアーの文書化支援コンサルティングは、「1部署10業務フロー当たりの文書化作業を支援した場合160万円。約7部署に展開した場合は240万円」。提供期間は3日間から6カ月程度である。

 新サービスについて大塚商会の石井ふみ子マーケティング本部次長は、「中堅・中小企業は、大企業と比べJ-SOX対応が遅れている傾向があるし、対応に避ける人員も予算も限られる。08年4月の適用期限から逆算し、実行性が高い範囲に限定したうえで納得感のある料金を設定した」と話す。

 安価な支援サービスは、J-SOX対応に未着手の大企業にも魅力的なはず。だが、3社とも大企業からの依頼は、基本的に受けない方針だ。「大手の場合、文書化の範囲が大きくなるため、08年3月までに作業が終わらない可能性がある」(IDSシェアー・ジャパンの佐久間修副社長)からである。

 中堅・中小企業向けサービスを提供する3社はいずれも、大手企業向けコンサルティング・サービスも提供している。そこでは客先にコンサルタントが出向き、顧客企業の状況に合わせてサービス内容を決める。

 そうした大企業向けに提供されている文書化支援サービスと比較すると、中堅・中小企業向けサービスには種々の制約がある。例えば、IDSシェアーの全社統制・業務処理統制の支援コンサルティングは、「プロジェクトの立ち上げ時の顧客訪問回数は4回」などと決まっている。制限回数をオーバーした場合は、別途費用が必要になる。

 キヤノンソフトは、「内部統制構築実践ガイダンスサービス」において3日間の集合研修を実施するが、講習会後にコンサルティングを受けたり相談したりする際は、別途費用がかかる。大塚商会のサービスでもコンサルティングは別料金である。

 すなわち各社とも、「顧客企業の担当者が、自力で文書化作業をこなせるようになることを支援する」というスタンスは共通だ。限られた時間でJ-SOXに対応するためには、支援サービスの活用と並行して、社内の体制整備が不可欠である。