写真●北上 義一氏 ミサワホーム 情報システム部長
写真●北上 義一氏 ミサワホーム 情報システム部長  (写真:後藤 究)

 ソリューションプロバイダには、「自分たちが最後までシステムを作り上げるんだ」という気迫と責任感をもっと見せてほしいと、いつも感じている。

 現在のITシステムはホストコンピュータの時代と異なり、さまざまな機器やツールが絡み合う複雑な構造になっている。すぐ下請けやツールの開発元のせいにするようなソリューションプロバイダと組めば、システム開発が失敗するのは目に見えている。かといって、異なるメーカーのソフトやハードの特性を把握して、トラブルなくシステムを構築する作業は、ユーザー企業には負担が大きすぎる。ソリューションプロバイダには複数の工事業者を一手に束ねて建設現場を仕切る、ゼネコンの現場監督のような手綱さばきを期待しているのだ。

 新たに付き合うソリューションプロバイダもこうした観点で評価する。過去の実績を考慮するのはもちろんだが、当社の開発スタッフと顔を突き合わせた状態で、彼らができることだけでなく、できないことを語れるかどうかを注意して聞いている。そこに、ソリューションプロバイダとしての責任感の有無が垣間見えるからだ。

 当社は2007年1月から、災害発生時でも36時間以内に全国の拠点やグループ会社で業務を再開できるディザスタリカバリー環境を運用している。このプロジェクトを一括発注した大手ITベンダーは、まさに我々の要求に応えるような提案活動をしてくれた。

 RFP(提案依頼書)を読み込みコンセプトを深く理解したうえで、システムの基本設計や納期に問題があれば「それは無理です」ときっぱり言ってきた。その根拠がいずれも明白で、代替策もちゃんと用意してきた。このITベンダーの決然とした姿勢に熱意と責任感の強さを感じ、基幹業務システムを担当していた別の企業の提案を退けて発注を決意した。「何を今さら、当たり前のことを」と思われるかもしれない。だが、それをできない企業がまだまだ多いのは確かだ。「何でもできます」というような提案をする企業には責任感を感じられない。

 これには苦い経験がある。今年の春に稼働させたユーザー認証システムに障害が起こり、社員が基幹業務システムにアクセスできないというトラブルが発生した。これを一括して請け負ったITベンダーの対応がひどかった。「傘下のSIerをとりまとめ、すべて当社が責任を持って完成させる」と言っていたのに、その営業担当者は「自社製品じゃないのでよく分からない」とまるで他人事。担当の技術者も、下請けのSIerと当社が開いたトラブル対策会議に出席しない始末だった。こんな姿勢の会社とは、長く付き合おうとはとても思えない。

 システムは住宅やビルの建設と違って形がなく、途中で頓挫すれば無に帰する。だからこそ最後までやり抜くというソリューションプロバイダの責任感が、ユーザー企業にとっては頼みの綱なのだ。(談)