第2回 ファイル共有のコツ(前編)ネットワークOSの最もメジャーなアプリケーションであるファイル共有は,Vistaのメリット,デメリットが目に付きやすい。ファイル共有を速度と機能の両面で強化したVistaだが,使い勝手の向上とセキュリティ機能の厳格化に伴う思わぬ落とし穴に注意する必要がある。 Vistaのファイル共有機能で押さえておきたい変更点は大きく四つある(図1)。(1)ワークグループ環境でコンピュータの一覧を管理するプロトコルを追加したこと,(2)TCP/IPスタックとSMBプロトコルを刷新して実効速度を上げたこと,(3)ファイル単位の共有機能を備えたこと,(4)セキュリティ設定の厳格化──の四つだ。
前の二つの変更点では,多くのユーザーがそのメリットを受けられる。注意が必要なのは後ろの2点である。ファイル単位の共有は手軽に使えるものの,意図しない共有が自動的に作られてしまうという諸刃の剣。機能を実現する仕組みを理解せずに利用するのは危険ですらある。 セキュリティ設定の厳格化は,Windowsのファイル共有機能と互換性を持つサーバー・ソフト「Samba」のバージョン2.xとの間で,認証に失敗するという問題を引き起こす点を覚えておきたい。 ワークグループ環境で目立つ進化Windowsネットワークでファイル共有を使う際,コンピュータの一覧を表示させ,そのアイコンをクリックして共有フォルダを探す,という操作を誰しも経験したことがあるはず。このコンピュータや共有フォルダの一覧を実施・管理するのが「ブラウジング」と呼ばれる機能である。Vistaでは,このブラウジングに際して生じるネットワーク・トラフィックやコンピュータへの負荷を少なくした。 Vistaで恩恵を受けられるのは,ワークグループ環境で運用しているユーザーである(図2)。ブラウジングは,ワークグループ環境とドメイン環境でその挙動がまったく違うからだ。
ワークグループ環境では,共有リソースを管理するマシンが特に決まっていない。同じワークグループ(初期設定ではWORKGROUP)に属するマシンが同一セグメント上のマシンに一斉同報する「ブロードキャスト」を繰り返すことで,共有リソースの情報を集約する「マスタブラウザ」を決める。 問題は,違うワークグループに属するマシンであろうと,Windowsネットワークに対応しないマシンであろうと,ブロードキャスト・パケットが送られてしまうこと。それらのパケットは帯域を圧迫するうえに,パケットの中身を解釈して廃棄する処理をコンピュータに強いる。 そこでVistaでは,これらの無駄を回避する仕組みとして,「LLTD」と「LLMNR」と呼ぶ新プロトコルを追加した。LLTDは,ネットワーク上のパソコンやネットワーク機器を探索するプロトコル。LLMNRは,マルチキャストで名前解決するためのプロトコルである。LLTDは,実装するマシンしか問い合わせと応答を発しない。LLMNRのマルチキャストによる問い合わせと応答は,同じマルチキャスト・グループに属するマシン間でしかトラフィックが生じない。 ちなみにドメイン環境では,リソースの名前やアドレスを格納するActive Directoryと,コンピュータの名前とIPアドレスを相互変換するDNSが中心となって共有リソースを集中管理している。問い合わせと応答は1対1 の関係であり,無駄はない。LLTDの仕組みにしても,ドメイン環境では自動的に無効になる。 広帯域WANでの実効速度を改善ワークグループ,ドメインを問わず得られるメリットは,新TCP/IPスタックと「SMB 2.0」の搭載がもたらす実効速度の向上と,機能強化である。新スタックはRWINの上限を,SMB 2.0は既定のバッファ・サイズを,それぞれ拡大した。コマンドとそれに対する応答が少なくなるため,長距離区間や無線LANなど,遅延の大きな通信環境での実効速度向上が期待できる。 実際にSMB 2.0使用時のパケットの流れを見てみると,従来のSMBのように応答確認を待つことなく,SMB 2.0では64Kバイトを連続送信しているのが見て取れる(図3)。応答パケットの数も少ない。
ただSMB 2.0は,通信する組み合わせがVistaおよび次期サーバーOS「Windows Server 2008」のどちらかでなければ有効にならない。ファイル・サーバーをWindows Server 2008にアップグレードしておけばVistaに切り替わったクライアントが恩恵を受けられるとはいえ,肝心のWindows Server 2008の出荷は2007年後半以降になる。 SMB 2.0はWAN高速化装置(WAFS)の役割を一部肩代わりする機能であるが,その効果を多くのユーザーが実感できる環境が整うまでには,まだ時間がかかりそうだ。
出典:日経コミュニケーション 2007年6月1日号
132ページより
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