最後のLessonでは,アドレス空間の大半を占めるグローバル・アドレスに注目する。グローバル・アドレスはインターネット上でホストを見分けられるようにするため,世界的に重複しないように割り振るしくみがある。

プロバイダが一括して割り当てる

 IPアドレスの割り当て方は,(1)ネットワークの規模に応じたサブネット・マスクを適用し,(2)「ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)」が個人や企業にIPアドレスを貸し出す(割り当てる)方式になっている

 IPアドレスがユーザーの手に届くまでの基本的な流れは,まず世界的にIPアドレスを管理するICANN/IANAが世界の五つの地域にブロック単位で割り振り,各地域のIPアドレス管理団体が国別に割り振る(図4)。このあと,各国の大手プロバイダが個人や企業に割り当てている。

図4●IPアドレスを入手するまでの流れ
図4●IPアドレスを入手するまでの流れ
IPアドレスを国際的に管理するICANNが各地域のIPアドレス管理団体へ割り振り,各地域のIPアドレス管理団体が各国へ割り振る。その後,国内の大手プロバイダから個人や企業に割り当てられる。 [画像のクリックで拡大表示]

企業や個人に直接割り当てていた

 かつては,インターネットに接続したい企業や個人は国別のIPアドレス管理団体に申請し,IPアドレスを割り当ててもらっていた。割り当ててもらえるIPアドレスの数は,組織の規模によって3種類あった。

 1番大きな単位はホスト・アドレス数が1677万7214個で,クラスAと呼ばれていた。2番目はホスト・アドレス数が6万5534個で,クラスBと呼ばれた。3番目はホスト・アドレス数が254個で,クラスCと呼ばれた。これらのネットワークの規模を表す表記方法として,クラスAを/8,クラスBを/16,クラスCを/24と書く場合もある。

ホスト数に合わせて割り当てる

 ところが,インターネットの普及によってIPアドレスを必要とするユーザーが増えた結果,二つの問題が生じた。IPアドレスの数が足りなくなってきたことと,アドレスをばらばらに割り当てていくとルーターの経路表に記録する経路数が膨大になることである。

 クラスを適用した場合,トータルで211万3660個のネットワークにしか割り当てられない。そこで,クラスにとらわれずホスト数に応じたサブネット・マスクでIPアドレスを割り振る方法が1993年あたりから採用された。このクラスにとらわれない方法をCIDR(classless inter-domain routing)と呼ぶ。CIDRを使うと,クラスを適用したときよりも多くのネットワークにIPアドレスを割り振ることができるので,IPアドレスの枯渇時期を先送りできる。

プロバイダが経路を集約

 二つ目の問題である経路数については,割り当て方を変更することで解決した。IPアドレス管理団体が直接企業や個人に直接割り当てる方法から,いったんプロバイダに連続した番号を割り振り,プロバイダが企業や個人に割り当てるように変えたのだ

 プロバイダに連続するアドレスを割り振ると,経路をまとめることができる。例えばあるプロバイダが192.168.0.0~192.168.255.255までのアドレスを持っているとすると,インターネット上の他のルーターには192.168.0.0/16とだけ通知すればよい。このようにまとめることを,「経路情報を集約する」という。

 これら二つの工夫により,現在は効率よくIPアドレスを割り当てるしくみで運用されている。ただ,IPアドレスは有限なので,いつかは枯渇する。日本のIPアドレス管理団体であるJPNICによると,2006年時点で予測すると,未割り当てのIPアドレスがなくなってしまうのは2016年頃になるという。