Lesson2ではIPアドレスの構造に目を向けよう。ホスト(パソコンなどのコンピュータ機器)のIPアドレスはどのように割り当てるのかを押さえておきたい。

一台を特定するための情報

 IPアドレスの役割はIPの世界でホストを見分けられるようにすることである。人間の世界でいえば,学校のクラスと出席番号で生徒を見分けることと同じだ(図2-1)。

図2-1●IPアドレスはIPネットワークに属するホストの識別子
図2-1●IPアドレスはIPネットワークに属するホストの識別子
IPアドレスは,ネットワークと,そのネットワーク内のどのホストかを特定するための情報。人間の世界における,クラスと出席番号と同じようなものである。

 出席番号はクラスの中で一人ひとり異なる。このため,「2年1組出席番号6番は誰ですか?」といえば該当する生徒がわかるように,クラスと出席番号は生徒を識別するためのアドレスなのだ。IPの世界でも同様に,IPアドレスがわかれば特定のホストを識別できるのである。

ネットワーク部とホスト部がある

 IPアドレスはホストを特定するために2種類の情報を持っている。ネットワークの情報とネットワーク内のホストの情報だ。それぞれネットワーク(ネットワーク・アドレス)部,ホスト(ホスト・アドレス)部と呼ばれている。

 ネットワーク部は学校の例で言えば,2年1組などのクラスにあたる部分(図2-2)。ネットワーク部を見れば複数あるネットワークの中で,目的のホストがどのネットワークに属しているのかを特定できる。

図2-1●IPアドレスはネットワーク部とホスト部で構成される
図2-1●IPアドレスはネットワーク部とホスト部で構成される
ネットワーク部とホスト部の情報を合わせることでホストを識別できるようになる。
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 ホスト部は出席番号にあたる部分だ。出席番号はクラスの中で一人ひとり違う番号であるように,ホスト部のアドレスはネットワーク内で重複しないように割り当てられている。

 通信相手にデータを届ける場合,ルーターはまずネットワークを特定してから,目的のネットワークのルーターにデータを送り,そのルーターがネットワーク内のホストにデータを届けている。このようにネットワーク部とホスト部の情報が揃ってはじめて,ホストを識別できるのだ。

すべて0とすべて1は使わない

 ネットワーク部とホスト部の役割が理解できたら,次は実際に複数のホストにどのようにしてIPアドレスを割り当てているのかを見てみよう。

 IPアドレスを割り当てる際の注意点は二つある。一つは先ほど紹介したようにネットワーク内でホスト・アドレスが重複しないようにすること。もう一つは,特定用途のIPアドレスと同じになってしまう組み合わせは使わないことである。

 実はホスト用のアドレスとして使ってはいけないものが2種類ある。一つはそのネットワークを意味するアドレス(ネットワーク・アドレス)。ホスト部のビットがすべて0になるアドレスだ。もう一つは,そのネットワーク内にブロードキャストするときに使うアドレス(ブロードキャスト・アドレス)。ホスト部のビットがすべて1になるアドレスである。

 例えば192.168.1.128というネットワーク内のホストにIPアドレスを割り当てる場合を考えてみよう。ネットワーク部は29ビットまで,ホスト部は残りの3ビットとする。

 ホストに割り当てられるIPアドレスは,ホスト部の3ビット分から考える。3ビット分の0と1の組み合わせを計算すると,000から111まで8通りある。これらを一つ目の注意点で述べたように,一つずつ重ならないように割り当てる。このとき,二つ目の注意点にあったように000と111は使わない。000のときのIPアドレスは192.168.1.128,111のときのIPアドレスは192.168.1.135だ。

 これらの注意点を踏まえると,ホストに割り当てられるIPアドレスは192.168.1.129~192.168.1.134の六つになる。