2006年度は対象161社中118社、73%の企業が増収決算、前年度の70%を超えた。成長性(売上高伸び率)で見ても、平均は前回(対象169社)の5.0%から5.7%と上向いている。金融業界を筆頭にした堅調なIT投資の伸びが、各社の好業績を牽引した。

 1位はメディカルシステムネットワーク。薬局や病院向けの医薬品サプライチェーンや薬局業務システムなどの情報サービスを強みとする。2006年度は薬局運営会社の買収などが大幅成長につながった。


●成長性ランキング(1位~30位)
黒文字の社名は連結決算の企業,青文字の社名は単独決算のみの企業
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 2位のSJホールディングスは、昨年の2位に続いて、高い成長率を達成した。中国の開発子会社をフル活用したオフショア開発体制を強みに、売り上げを伸ばしている。中国における日本向け開発のほか、日本国内の開発案件に要員を提供する事業も好調だった。子会社化したアルファテック・ソリューションズ(2007年3月に売却)の売上高も業績の伸びに貢献した。

 売上高順位の上位企業で、成長性ランキングトップ10に入ったのが、前期比23.2%増で7位の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)。昨年10月の旧CRCソリューションズとの合併が寄与し、売上高順位は昨年の11位から7位に上昇。奥田陽一社長は「この業界でリーダーとして生き残っていくには、規模の拡大が不可欠」と、売上高重視の成長戦略を描く。今年後半からは、合併の相乗効果となる提案活動も売り上げに寄与する見通しで、今期も18.2%増の高い成長率を見込む。

 CTCに限らず、2006年度は売上高を大きく伸ばした大手が目立った。「大手ユーザーからの大規模で難易度の高い案件が増えている」(大和総研の上野真シニアアナリスト)ことが、大手の好業績につながったといえそうだ。

 例えば売上高順位1位のNTTデータ。増収幅にして1376億円、伸び率15.2%を達成し、連結売上高は1兆円を超えた。売上高の7割を占めるシステムインテグレーション事業では、テレコム、製造、流通業向けシステム、金融分野における共同利用型システム、中央省庁向けシステムのいずれも好調だった。売上高順位5位の野村総合研究所(NRI)も、証券業向け開発案件、保険業向け開発案件など金融業界向けの売り上げが特に好調で、売上高伸び率12.9%と2ケタ成長を達成した。

 これら大手の好調さは、開発力を供給する下位のソリューションプロバイダにも、堅調な成長をもたらした。例えばNRIの有力パートナーの1社であるアルゴ21は、前年のマイナス成長から一転、2ケタ成長への急回復をとげた。

売上高上位20社中8社が減収

 そのほか、業務パッケージの販売が好調だった企業も好業績だった。ワークスアプリケーションズは、パッケージの新規導入社数は前期比35%増の292社となり、売り上げは前期比22.2%増。東洋ビジネスエンジニアリングも、自社製ERP事業が前年比46.8%増、SAP製品関連事業が同29.1%増と大きく伸ばし、売上高の伸び率は18.5%だった。

 高成長の市場環境化にあって、減益にあえいだ大手企業も目立った。売上高順位の上位20社を見ると、8社が減収。不採算案件撲滅や経営管理力強化で出遅れた影響が出た格好だ。

 例えばNECフィールディングは、保守サービスの減収に加え、公認会計士協会のガイドラインに従って付加価値の低い商社的取引の売上計上をやめたことが響き、前期比7.9%の減収となった。また、大型赤字案件が足を引っ張って赤字決算への下方修正を余儀なくされたTISは、増収ながらほぼ横ばいの 0.8%増にとどまった。

 今期は業績予想を公表した145社のうち、86%の125社が増収を予想している。平均の伸び率は単純計算で5.9%。2006年度の5.7%を若干上回る成長を見込む。

●成長性ランキング(31位以降)
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【注目企業】

外部の力を生かせる成長の仕組みを作る
伊藤忠テクノソリューションズ
奥田 陽一 社長

 増収増益の一番大きい要素はCRCソリューションズとの合併だが、旧会社ベースでも旧CTCは2期連続、旧CRCは7期連続で増収増益を達成した。不採算案件の削減や売上高利益率の改善など、質的にもいい結果だった。

 今後の成長戦略では、トップライン(=売上高)の伸びを重視している。業界のトップ企業の1社として成長していくには、大規模な案件を手掛けられる経営 規模が不可欠だ。2008年度の売上高目標は4000億円、うちSIビジネスは現在の700億円から1000億円に伸ばす。売り上げの増加は利益の拡大に も直結する。2003年ごろから利益が出ない案件はやらないことにし、実績評価の仕組みなども変えてきたからだ。

 売り上げを伸ばすといっても、1人月いくらという発想で人を増やすしかないのではだめだ。また、内製をしているほうが偉いという考えはとんでもないこ と。パートナーとの提携や組織化といった、外部の力をうまく使う仕組みを作らなければならない。今年4月に「ソフトウェアエンジニアリングオフィス (SEO)」という組織を作ったのはそのためだ。

 ソリューションの品ぞろえ強化による横展開や、開発生産性の向上にも取り組む。業種別にどの分野を攻めるかを決めたら、その業界に強いところと手を組む ことも必要だろう。新しい大口顧客を開拓する「スーパーアカウント戦略」にも引き続き力を入れていく。2007年後半からは、合併による相乗効果も売り上 げに貢献し始める。旧CRCの強みを生かし、データセンターを軸に開発から運用までを手掛けるような案件はその一つだ。

 成長に向けてこれまでのやり方を変える手を打っていくことが、この業界を魅力的にすることにつながるはずだ。(談)