業界全体で見ると、2006年度の収益力(売上高営業利益率)の水準は上がった。売上高100億円以上の企業の平均収益力は5.8%(対象160社の単純平均ベース)で、前回の調査(対象165社)から0.3ポイント上昇した。上位30社だけの平均で見ると12.1%。前回の11.6%に比べ0.5ポイント改善している。2ケタの収益力を上げた企業数も、前回の17社から21社と着実に増えた。


●収益力ランキング(1位~30位)
黒文字の社名は連結決算の企業,青文字の社名は単独決算のみの企業
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 収益力が向上した背景にあるのは、需給ひっ迫によるエンジニア単価の上昇と、不採算案件の減少などによるコスト削減である。今期の受注単価の上昇率は、前年比2~5%だったと見られる。

 不採算案件が減ったのは、ITベンダー各社が案件の採算性を評価する制度を導入したり、プロジェクトマネジメントの強化に力を入れたりした成果が出ているためだが、それだけではない。好況によりITベンダーが「選別受注」しやすい状況にあったのも一因のようだ。JPモルガン証券の佐藤博子シニアアナリストは、「ITベンダーはリスクの高いプロジェクトにわざわざ手を出さなくとも仕事が潤沢にあるので、自分たちが得意とする分野の案件に専念できている」と指摘する。

金融特需でNSDは18%越え

 収益力ランキング上位の顔ぶれは前回と大きく変わらない。首位は、中堅・中小企業向けERPパッケージを手掛けるオービックだ。

 営業利益率は28.1%で昨年に比べ0.6ポイント上昇。収益力ランキングでは8年連続1位を達成した。オービックは収益力向上のため、「売り上げの平準化」を推進した成果が出た格好だ。

 平準化の狙いは、案件の期末集中化による採算性・収益性の悪化を回避することにある。案件が期末に集中すると、エンジニアの残業代や外注費がかさみやすい。それを未然に防ぐため、システム開発案件の納期を分散させるよう、ユーザー企業に対して提案営業を展開した。それにより同社の2006年度第1四半期(4~6月)の売上高は104億円(2005年度同期88億円)、第2四半期が121億円(同134億円)、第3四半期は107億円(同94億円)、同第4四半期は126億円(同141億円)となり、四半期ごとの平準化が大きく進んだ。

 第2位は前回4位の日本システムディベロップメント(NSD)。同社の強みは、大手の金融ユーザー企業と長年深く付き合ってきたこと。それにより今期は、積極的な営業活動をしなくても、既存顧客からの受注量が増加した。

 販売管理費を抑えたまま、エンジニアの単価を前年に比べ5%上げることができたという。NSDは“金融特需”の恩恵を最大限に受けた1社である。

NTTデータが73位から30位にアップ

 NTTデータの収益力も目を引く。今回の収益力は8.6%で30位。前回の73位から大きく順位を上げた。同社が2010年3月期の経営目標として掲げている「営業利益率10%」の達成も現実味を帯びてきた。同社の収益性向上には、販売管理費の抑制が大きく利いている。社内システムの整備による運用費の削減や、管理部門における業務改善、首都圏に分散する21拠点のオフィスの集約などで、販管費を前年に比べ98億円圧縮した。

 NTTデータとは逆に、大きく順位を下げたのがジャステックである。収益力上位の“常連”で前回は6位だったのが、今回は17位。一部の大型案件で見積もりミスが発生し、それに伴う費用の増加があったためとしている。

 さらに今回の収益力ランキングでは、売上高100億円台の中堅企業の健闘も光る。病院・薬局向けシステムに強みを持つイーエムシステムズと、従業員数653人のSIerである東計電算がトップ5に食い込んだ。

●収益力ランキング(31位以降)
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【注目企業】

追い風に甘んじず「価値」を示す
日本システムディベロップメント
冲中 一郎 社長

 当社の強みはメガバンクや信託銀行、生損保などのユーザー企業と深く付き合っていることだ。特に今期は得意先のシステム需要が旺盛で、受注条件が改善した。当社のエンジニア単価は前年に比べ5%上がった。それが営業利益率を伸ばすことができた理由の一つだ。

 それだけではない。既存のユーザー企業との信頼関係が崩れないよう、ユーザー企業との交渉を粘り強く続けていることも、収益力の向上につながっている。当社が付き合っているユーザー企業の中には、ITコストを抑制するために、オフショア開発に関心を抱くところが増えている。我々が請け負っている仕事の一部を「海外のITベンダーに任せたい」との相談を受けたことは何度もあった。その場合は必ず「オフショア化はできない」とお断りしてきた。

 当社は元請けとして、システム成果物の品質を保証しなければならない。付き合いのない海外のITベンダーと組んで、品質を維持することは難しい。万が一、外部のベンダー管理でミスをすれば顧客に迷惑がかかるし、当社の収益力も落ちる。「品質維持のため」ということをきっちりと説明すれば、ユーザー企業は理解してくれるものだ。

 今後は、大手に絞って新規顧客を開拓する。そのために今春、営業組織を再編成した。

 さらに真のソリューションプロバイダを目指して、エンジニア個々のスキルを“棚卸し”する。技術者の年令や経験年数だけで単価の値上げを交渉するという姿は“不健全”だ。当社の技術力を正当に評価してもらえず、悔しい思いをするケースは少なくない。当社の技術力をユーザー企業に対してきっちり示し、それに見合った対価を支払ってもらえるようにしたい。それが収益力の維持と向上にもつながると見ている。(談)