ちょっと動いたら,通話中の携帯電話から声が聞こえなくなった,切れてしまった‥‥。こんな経験をされたことがある方も多いのではないでしょうか? 実は携帯電話の電波は,数cm動いただけでも強さが大きく変わることがあるのです。

 携帯電話では,端末と無線基地局の間を電波でつないでいます。端末と無線基地局の間には障害物があることが多く,この場合はビルなどの建物からの「反射波」や,曲がって届く「回折波」を受信していることがほとんどです。そのうえ,これらの反射波や回折波はあちこちから届くので,お互いにうち消し合ったり,強め合ったりして干渉します。この干渉のことを「フェージング」と呼びます。

 このフェージングという現象は,電波の波長に関連しています。電波の強いところと弱いところの間隔は,1波長のほぼ半分になるのです。波長は電波の周波数によって決まります。例えばFM放送の波長は約4mなので,フェージングの強さと弱さの間隔は約2mです。クルマで移動していて,断続的に雑音が聞こえるのもこのフェージングの影響です。

 第3世代携帯電話の場合,2GHz帯の電波を使います(auは800MHz帯)。この周波数の波長は約15cmなので,電波の強さと弱さの間隔は,約7.5cmです。つまり,ギリギリの状態で使っている場所では7.5cmだけ動いただけでも,電波状況が変わって携帯電話が切れてしまうことがあるのです。

携帯電話はなぜつながるのか   紹介した内容については,書籍『携帯電話はなぜつながるのか』(日経BP社)で詳しく解説しています。ぜひ,そちらもご覧ください。