「ワンセグ」のサービスが始まり約1年半,テレビ東京はワンセグのデータ放送で「非連動コンテンツ」の充実に重点を置くようになった。番組連動コンテンツと非連動コンテンツのバランスの取り方や,将来への展望について,メディア事業推進本部デジタル事業推進局局次長の横銭秀一氏に聞いた。
ワンセグサービス開始から1年半が経過して,番組提供の位置付けに変化はありましたか。
写真1●「ワンセグ株価」の画面 |
ワンセグサービスは,固定型テレビ向けに放送している地上デジタルテレビジョン放送と同じ番組を放送するサイマル放送(ワンセグの理解を深めるキーワード解説参照)の形式で提供しています。各局はその枠組みの中で,情報誌の携帯サイトと提携する仕組みを作ったり,電子クーポン機能を搭載するなどして,将来的なビジネスにつなげようとしています。
一方,固定型テレビでビジネスの指標としている視聴率は,現状のワンセグサービスで測定することができません。ワンセグを誰がどのぐらい見ているかは,データ放送から1次リンク・コンテンツ(「第2回 ワンセグ放送のサービス・イメージ」の図3参照)にアクセスした数が,唯一数量的に測れる指標です。すなわち,1次リンク・コンテンツへのアクセス数をある程度稼がないと,ワンセグが広告価値のあるものになるのかを推し量ることができません。まずは,1次リンク・コンテンツのアクセス数を増やすことで,将来的にビジネスが立脚できるメディアにしようと考えたわけです。
アクセス数を増やすためにはデータ放送を見てくれる人を増やさなければなりません。サービス開始当初は,他局と同様にドラマや情報番組などの番組連動コンテンツの充実を考えていました。しかし,利用者の実態を調べると,番組中に連動データ放送を見たり,連動データ放送のためにワンセグを見るという人は極めて少ないことがわかりました。それならば,非連動データ放送のコンテンツを充実させて,「情報を得るためにテレビ東京のワンセグを見る」層を取り込もうと考えたのです。
非連動データ放送のコンテンツへの考え方は。
テレビ東京は,「経済」「旅・グルメ」「アニメ」の3つをテレビ番組のウリにしていますし,視聴者にもこれらに強いという意識が浸透しています。ワンセグのデータ放送でも,この3つの柱を軸に情報を提供することで,テレビ東京のワンセグの利便性を高めようというわけです。
経済では,前述したように2007年3月から「ワンセグ株価」という株価情報の提供を始めました。また,旅・グルメ関連では行楽情報を提供しています。7月2日からは「ワンセグ花火大会なび」(写真2,写真3)を提供しているほか,秋には紅葉情報,冬にはスキー情報を配信しています。こうした情報を提供するようになって,当初考えていたよりも飛躍的にアクセス数が伸びました。毎日のように接してもらえるコンテンツを提供することの効果をひしひしと感じています。
写真2●「花火大会なび」の画面 | 写真3●花火大会開催地の地図情報も表示 |
テレビ東京のワンセグならば,“経済や旅・グルメの情報はいつでも見たり調べたりできる”。このことが,テレビ東京に新たな価値を生む宝の山になると思っています。数字の積み重ねを続け,ワンセグに広告価値があるいうことをクライアントに説明できるようにしたいと考えています。ただ,もう一つの柱であるアニメに関しては,「権利の塊」でもあり現状ではコンテンツとして提供できる道筋は見えていません。
データ放送で提供している情報を教えて下さい。
株価,旅・グルメ以外の非連動型コンテンツとしては,「スポーツ情報」「ニュース」「天気」「連動番組案内」「ヒ・ミ・ツ基地」に加えて,テレビ東京が提供する携帯サイト「アニテレ」へのリンクなどがあります(表1)。
表1●テレビ東京のワンセグサービス---番組非連動データ放送コンテンツ一覧 (2007年7月末時点) |
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もちろん連動データ放送も提供しています。「ガイアの夜明け」や「出没!アド街ック天国」「いい旅・夢気分」など複数の番組で連動データ放送を行っています(表2)。また,「いい旅・夢気分」と「出没!アド街ック天国」のコンテンツは,非連動データ放送の「旅・グルメ」内のコーナーに過去ログとして保管しています。
表2●テレビ東京のワンセグサービス---番組連動データ放送コンテンツ一覧 (2007年7月末時点) |
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