●売上高100億円以上の主なソリューションプロバイダの業績/経営指標一覧(売上高順)
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 ユーザー企業のIT投資拡大の恩恵を受け、業績は絶好調。高収益体質への変革に成功した先行企業は、いよいよ拡大路線を目指し始めた─。2006年度のソリューションプロバイダの業績からは、前年度からの業績拡大基調が一層鮮明になった状況が見て取れる。

 業績ランキング対象である売上高100億円以上の企業のうち、2004年度から2006年度の業績を比較できる140社の平均による売上高の伸びは、前年度から2.0ポイントアップして4.9%の成長だった。ソリューションプロバイダ各社は、前年度には顧客の選別や赤字案件の撲滅に取り組み、利益回復を優先した。2006年度はそれに加え、売上高の伸びが追いついてきた格好だ。2006年度の経常利益の伸び率は140社平均で14.9%。前年に続き2 ケタの高い伸びを達成している。

成長性5%以上の企業が半数を超える

 本特集では、ソリューションプロバイダの実力を示す経営指標として「成長性(売上高伸び率)」「収益力(売上高営業利益率)」「生産性(1人当たり経常利益)」の三つに着目し、ランキングをまとめた。下の図は、これらの指標における過去5年間の業績の推移だ。これを見ると、2006年度は売り上げと利益の拡大が両立する成長フェーズに入ったことがよく分かる。

●成長性(売上高伸び率)の推移
 
●収益力(売上高営業利益率)の推移
 
●生産性(1人当たり経常利益)の推移

 例えば成長性。売上高伸び率が5%以上の企業の比率は、2002年度から2004年度は全体の3割強にすぎなかった。業績回復が鮮明となった2005年度でも41.4%にとどまっていた。これに対し2006年度は、50.3%と半数を超えた。2ケタ成長の企業だけ見ても、2005年度の20.1%から 26.7%に増えている。収益力では、売上高営業利益率5%以上の企業の比率が2005年度の46.1%から2006年度は50.9%に上昇した。

 ただし今回、売上高と営業利益を前年比較できる159社中、黒字転換も含めた増収増益企業は88社。全体に占める比率は55%で前回とほぼ同じだ。このことから、前年度に増収増益を達成した“勝ち組”企業が、今期さらに業績を伸ばした構図が浮かび上がってくる。

 その象徴は、売上高ランキング1位のNTTデータ。2005年度に減益から増益に転じた同社は2006年度、前年比15.2%増の成長を達成し、IT サービス業界に1兆円企業が誕生した(売上高1兆449億1800万円)。収益面でも、営業利益が前年比92.6%増の902億5000万円と倍増。トップ企業が業界の躍進を自ら牽引する。

 市場別で特に好調だったのは、大手銀行など金融機関向け。「銀行の予算は増え続けている。SE単価も上昇して採算性も上がった」(大和総研の上野真企業調査第三部シニアアナリスト)。金融業界に有力顧客を持つ企業は、その恩恵を十分に享受した。大手では売り上げ、利益ともに2ケタ増となった野村総合研究所や、利益を約40%増やした日立ソフトウェアエンジニアリングなどだ。中堅では、営業利益率を18.3%に高めた日本システムディベロップメントの好調ぶりが目立つ。


アナリストの眼

人材投資だけでは魅力は高まらない
JPモルガン証券
株式調査部 エグゼクティブ ディレクター シニア アナリスト
佐藤 博子氏

 ITサービス市場は2007年度も、引き続き堅調に推移すると見ている。銀行の統合案件に加えて、生命保険・クレジットカード会社の大型案件が控えているからだ。流通サービス業と製造業の案件も順調だろう。組み込みソフト開発の需要も増えそうだが、NTTデータがこの分野に進出するなど競争はより激化するだろう。

 エンジニア不足は当面解消されそうもないため、今後も単価が平均2~3%上昇しそうだ。プロジェクトマネジャーや業界スペシャリストは引っ張りだこという状況が続く。SIerには追い風が吹いているが、2007年度もネットワークインテグレータは苦戦しそうだ。NGN関連ビジネスが立ち上がるのは、 2008年度以降になるだろう。

 2006年度に好業績を上げた企業の多くは、人材育成や社内システム、データセンターなどに投資している。「魅力ある産業」に向け、儲けを人材育成や労働環境の改善に振り向けることは、長期的に見ても評価できる。ただしそれだけでは不十分。IT業界には配当性向を高めるべき成熟企業が出てきているものの、利益を出して、それを株主に還元する姿勢が乏しい点はいかがなものか。(談)