これまでは外部から見たシステム子会社の生き残り策を説明してきた。今回は、内部から見たシステム子会社の生き残り策について、自社の強みと弱みをどう分析するかや、「外販ケイパビリティ」を構築するときのポイント、営業が備えるべきスキルなどを中心に解説していく。

 前回までは、外部から見たシステム子会社の生き残り策を説明し、財務状況とグループマネジメントという視点でとらえてきた。今回は、内部から見たシステム子会社の生き残り策を説明する。

 システム子会社が生き残るには、2つの条件を満たす必要がある。

 1つは、他のソリューションプロバイダと同様に、特定の業種・業務ノウハウもしくは特定の技術に強みを持っていることである。もちろん、その業種・業務ノウハウや技術は、「枯れた」ものであってはならず、今後はさらなる進化が期待でき、顧客に対する価値提供に寄与できるものでなければならない。

 もう1つは、他のソリューションプロバイダには自然に備わっている(なければ存続しえない)もので、すなわち「外販ケイパビリティ(能力)」である。システム子会社は、その生い立ちにより、今まで外販する必要がなかった。しかし外販するためには、今までと異なる営業スキルである外販ケイパビリティを構築する必要がある。

「誰に会うべきか」で外販スタート時に悩む

 まず、外販を本格的に開始したシステム子会社の悩みは、「市場動向を把握するターゲティング」「ユーザー企業との関係構築」「ユーザー企業のニーズ把握」「ユーザー企業に対するフォロー」のいずれの活動も未体験であることだ。そうした子会社でよく聞く言葉を並べてみると、こんな感じになるだろう。

 「いったい、どの企業を攻略すればよいのだろう。オイシイ企業はもうツバがついているし…」「そもそもどうやって、相手に会ってもらえばよいのか。単に“何か仕事はありませんか”では会ってもらえないだろう」といったものだ。さらに「どうやったら相手のニーズを聞き出すことができるのか。“何がお困りですか”と聞いても、明確な返答がない」「次に会うときは誰に会えばよいのか。誰がキーパーソンなのか。どのタイミングで何を持っていけばよいのか」といったこともあるようだ。

 読者の中にも、これらすべてに当てはまることはないだろうが、少なくとも1つは心に引っかかる項目があるのではないだろうか。

自社の強みや弱みを把握しているか

 そもそも、なぜターゲティングが必要なのか、を十分に理解しているシステム子会社は意外に少ない。これまでは親会社の望み通りにシステムを開発してきたし、維持管理は現行のシステムに障害が起きないように、また起きてもすぐ回復するように努めてきたからである。たとえ外販していても、たまたま保有している技術やシステムが他社にも要求されたから販売している場合が多い。

 また、売上高が数千億円以上の大企業ユーザーを相手にしていると、ターゲティングをする必要もなかった。親会社同様、ユーザー企業の要求に応じて自社の経済性が合うように事業を営めばよい。ターゲティングが必要となるのは、投資を含めてどこかの業種・業務セグメントを攻めるとき、中小企業を対象にするとき、パッケージ商品を企画するときなどである。

 ターゲティングをするには、まず自社の強みや弱みが外部からどう見えているかを把握しておく必要がある。これは自己認識だけでは不十分である。

 図1は自社の認識だけでなく、外部から見た競合との比較の例である。このほかにも、どの領域が伸びそうかという市場分析も必要である。これらの分析結果から、自社のターゲット領域と顧客を決めていく。

図1●競合他社と能力を比較してギャップを分析
図1●競合他社と能力を比較してギャップを分析
自社の強みや弱みを把握し、収益力向上のための課題を設定

 ターゲティングができたら、次は「関係構築」の段階である。経営トップからのリレーションや既存顧客からの紹介など多種多様だが、営業担当が正攻法でアプローチするなら、図2のようなリストをもとに営業活動を実施すべきである。図2のようなリストを見せると営業担当は、概ね「これらのことは、既にやっています」という答えが返ってくる。しかし我々の経験から言わせてもらえば、これをしっかりできているシステム子会社の営業担当は極めて少ないというのが実感である。

図2●営業活動リストの例
図2●営業活動リストの例
リストの背後にある営業活動の「肝」が理解されていないと表層的な活動になる

 「せっかく相手の情報を集めてもそれを営業トークに生かせない」「訪問する前に今回の目的と達成目標を明確に決めていない」「思い切って顧客の懐に飛び込めるような関係を築けない」などがよく見られる現象であろう。リストの背後にある営業活動の「肝」が理解されていないため、表層的な活動になっているのだ。