7月11日,2.5GHz帯周波数のうち固定利用に割り当てる地域バンド(固定系地域バンド)の免許方針が方向を転換。方針案では単独で参入できなかったNTT東西などの通信事業者が,一転参入可能となった。具体的には,2.5GHz帯を割り当てる事業者は「第3世代携帯電話(3G)事業者とそのグループ会社を対象外」としていたが,パブリック・コメントを経て,固定系地域バンドに限って条件が外された。

 「固定系地域バンドは,主にデジタルデバイドの解消のためにある。この目的にかなうなら,多くの事業者に取り組んでもらいたい」。総務省総合通信基盤局電波部基幹通信課の斉藤一雅課長は参入条件を変えた理由をこう説明する。3G事業者と同じグループに属しているNTT東西などの通信事業者は,方針案の段階では単独参入ができなかったが,これら事業者も免許申請が可能になる(図1)。

図1●固定系地域バンドは既存事業者の免許申請が可能に
図1●固定系地域バンドは既存事業者の免許申請が可能に
7月11日,2.5GHz帯広帯域無線アクセスシステムの免許方針が決定した。総務省は固定系地域バンドについて免許方針案を一部変更。第3世代携帯電話(3G)事業者およびそのグループ会社の単独申請を認めることにした。

 NTT東西などの既存事業者の参入が制限されていたのは,固定系地域バンドに移動系全国バンドと同じ参入条件を課していたため。この条件は,移動系全国バンドに新規事業者の参入を促し,競争によって市場を活性化するという意図の下に設けられた。

 だが,固定系地域バンドは主に過疎地のデジタルデバイド対策などで使われるもの。当初から移動系と参入条件を同じにしたことについて,疑問の声が挙がっていた。方針案に対するパブリック・コメントにも,過疎地でのインフラ敷設で実績があるNTT東西などが一律に排除されてしまうことに反対意見が寄せられた。

 パブリック・コメントを受けて方針が変更されることは珍しい。このため総務省は方針案に反対意見が出ることを織り込み済みだったとも推測できる。結果として移動系に話題が集中していた2.5GHz帯に,デジタルデバイド対策の側面があることを周知できた。

固定系で次世代PHSの可能性残す

 通信方式でも大きな変更があった。方針案では通信方式が事実上WiMAXに限られていたが,ここに次世代PHSを導入できる可能性を加えたのだ。

 免許を各地域単位で交付する地域系固定バンドの場合,原則各地域の通信方式はすべて同じにそろえる。隣接する地域で通信方式が異なると,送受信の同期が取れず通信できなくなるからだ。この問題を回避するために免許方針案には「WiMAXまたは次世代PHSのどちらかを全国で1方式」とした条件が盛り込まれていた。次世代PHSも通信方式の候補の一つだったが,採用を計画する事業者が多いWiMAXに比べて旗色が悪かった。

 今回総務省が決定した免許方針は,これを「当分の間はWiMAX」という表現に改めた。「“当分の間”という表現には,今後技術開発が進みWiMAXと同期が取れる次世代PHSが出る可能性がある点を踏まえた」(基幹通信課の今井清春課長補佐)という。

 移動系全国バンドは2波の帯域を用意しているため(図1参照),WiMAXと次世代PHSの二つの技術方式が入る余地がある。だが固定系は1波。そこに二つの技術方式の参入余地を残したところに,国産技術である次世代PHSに対する総務省の配慮が見える。

 次世代PHSを掲げて2.5GHz帯の参入を目指しているのは,現時点ではウィルコム1社。総務省が次世代PHSを支援することは,ウィルコムを後押ししていると見られかねない。一方,次世代PHSは海外展開を視野に入れた日本発の技術。「当分の間」という表現で次世代PHSの参入余地を残したところに,国際競争力強化を狙いたい政策の一端が垣間見える。