連結業績の推移/加入世帯数とデジタル化比率
図1/図2●連結業績の推移/加入世帯数とデジタル化比率
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 ケーブルテレビ(CATV)統括運営会社のジュピターテレコム(JCOM)は2007年7月30日,2007年度中間期(2007年1~6月)の連結決算(米国会計基準)を発表した。売上高は1281億円と前年同期に比べて24%の増加(通期予想に対する進ちょく率は49%),税引前純利益は176億円で同30.4%の増加(同57%)となった。通期の業績予想では,売上高が前年度に比べて18.5%増加の2630億円,税引前純利益が同じく12.7%増加の310億円を見込んでいる(図1)。

 税引き前利益が2けた増と好調な背景には,同社が掲げる「ボリューム+バリュー戦略」の効果が表れてきたことがある。「ボリューム」戦略とは,CATV事業者のM&A(企業の合併・買収)も含めて加入者数を増やし,インターネット接続や電話サービスなど加入者が利用できるサービスの数を増やすことを目指すものだ。「バリュー」戦略とは,加入世帯当たりのサービスの利用率(バンドル率)を向上させて,ARPU(加入世帯1件当たりの月間平均収入)を向上させることだ。これらの取り組みによって前年同期と比べると,加入世帯数は258万件と24%増加し,ARPUは約200円向上した。

 JCOMは今後もインターネット接続サービスの高速化など,収益性の高いサービスを導入するための伝送帯域を確保できるように,放送サービスのデジタル化を進める。デジタル放送サービスではハイビジョン(HDTV)チャンネルやHDD(ハードディスク駆動装置)内蔵STB(セットトップボックス),VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスが人気を集めており,デジタル化率(多チャンネル放送サービスの加入者全体に占めるデジタル放送サービス加入者の比率)は,前年同期より15ポイント増加して59%に達した(図2)。

 JCOMの森泉知行社長は決算発表の席で,買収したCATV事業者の運営を地域ごとにまとめる「リージョン化」によって,財務体質を強化する計画を明らかにした。これによって,複数のCATV事業者のオフィスや設備を共用して経費を節減でき,赤字の事業者を資本統合した場合には節税効果も期待できるという。8月1日にはジェイコム関東と調布ケーブルテレビジョン,ジェイコムせたまちの3社を合併したほか,関西地域でも複数のCATV事業者の一体運営を検討中だ。

 また,9月に予定されている番組供給統括会社のジュピターTVとの合併による番組コンテンツの強化も進める。同社は「ムービープラス」や「ゴルフネットワーク」などの人気チャンネルを多く抱える。今回の合併により,JCOMは番組の制作,供給から配信までを手がける総合メディア企業へと生まれ変わる。豊富な経営資源を生かしてコンテンツをさらに強化し,20%台にとどまる有料多チャンネル放送の普及率を向上させる。

 さらに,広告事業の強化も急ぐ。既に発行部数200万部の番組情報ガイド誌で全国向けの広告を掲載しており,VODサービスで広告映像をコンテンツとして提供することも開始した。複数のメディアを組み合わせることで加入者に高い訴求力を持つ広告モデルを確立し,収益源を多様化する。