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高田直芳の「ITを経営に役立てるコスト管理入門」

フランチャイズのロイヤリティ問題を探れ(後編)
契約書はハンコを押す前にしっかり読もう

ITpro 2007/08/20 ITpro

 今回はおさらいとして,まず前回のコラムに登場した2種類の損益計算書を並べます。

表1●コンビニ店の不思議な損益計算書(単位:千円)
 
表2●普段見慣れた様式の損益計算書(単位:千円)

 以降の説明では,表1表2にある(1)から(28)までを,用語の右肩に表示します。

 さて,表1では独立科目となっている本部へのロイヤリティ(12)が,表2では「III 営業費」の内訳科目になっています。これにより,売上総利益にかなりの違いが見られます。

「本当だ。表1の売上総利益(13)は20,000千円なのに,表2の売上総利益(26)は46,000千円に膨らんでいますね」
「以前,コンビニ店の経営者と話をしたとき,売上総利益よりも,粗利益(11)の大きさを自慢されたことがありますよ」

 表1にある粗利益(11)50,000千円は,表2の売上総利益(26)46,000千円よりも大きく,コンビニ店経営は魅力的に映ります。しかし,粗利益(11)は,本部へのロイヤリティ(12)を算出する根拠にすぎません。しかも,粗利益(11)には商品廃棄損(3)が上乗せされているのですから,水増しもいいところです。コンビニ店経営者の事業意欲をくすぐるにあたって,粗利益は都合のいい指標といえるでしょう。

「そうはいっても,売上高が2億円というのは,一国一城の主としては誇らしいものがありますよね」

 2億円を365日で割ると,日商ベースで約55万円になります。この例では,コンビニ店の最低ラインとされる日商40万円を超えていますから,まずまずの業績です。しかし,最も注目すべきは表2の営業利益(28)5,000千円です。これは,サラリーマンの年収5,000千円と同価値です。しかも,ここで取り上げた損益計算書は,かなりいい業績です。

「売上高が2億円といっても,砂上の楼閣みたいなものなんですねぇ」
安易な気持ちで脱サラしてコンビニ店経営を始めても,現実は厳しいということです。

 フランチャイズ方式は,地主と小作人の関係を現代に置き換えたようなものです。先祖代々受け継いできた土地と,人智によって生み出されたフランチャイズ方式とを比較するのは的はずれの感もありますが,いずれにしろ搾取される側が「財をなした」という話は寡聞(かぶん)にして知りません。

「現代の小作人は,契約書で権利関係が明確にされているぶん,まだマシですかね」

 契約書というのはハンコを押す前によく読むべきですし,不満があるならハンコを押さなければいい。土地に縛られて選択の自由がない小作人に比べたら,はるかに恵まれています。それだけに,小規模事業といえどもコンビニ店を営む以上,経営者たる者,会計の知識は最低限,身に付けておくべきです。

 平成19年6月11日,最高裁はセブンイレブンへの逆転勝訴判決を出しました。この裁判は,フランチャイズ加盟店がロイヤリティと商品廃棄損の取り扱いに関して,セブンイレブンに不当利益の返還を求めて起こしたものです。最高裁は判決文の中で「詳細なマニュアルや会社担当者の説明もあったことを総合すれば,会社側の計算方法は正しい」としながらも,補足意見として「契約書の記載は明確性を欠き改善が望まれる」としています。つまり,ロイヤリティや商品廃棄損の仕組み自体は合法だということであり,あとは,コンビニ店の経営者の側が契約書にハンコを押した時点で,商品廃棄損やロイヤリティの問題をどれだけ理解していたかという,事実認定の問題にすぎないことになります。

 セブンイレブン逆転勝訴判決になったとはいえ,高裁へ差し戻されたのは,その点を再度,審理するためです。

 中世ヨーロッパでは“caveat emptor”(キャベアト・エンプトア)というラテン語が,商売をするにあたって第一の心得とされていました。日本語に訳すと「買い手よ,注意せよ」という意味です。現代の言葉で表現するならば“due diligence”といったところでしょう。これは,事業を行なう者の心得として「勤勉は当然の義務である」といった意味です。

 そして,自らの意思で契約した後は,契約内容が公序良俗(民法90条)に反するものでない限り「私的自治の原則」が適用されます。会計に関する“due diligence”を怠って「だまされた」と騒ぐのは,オトナの行動としてあまりカッコのいいものではありません。

「気をつけるべきことは,商品廃棄損を少なくするために,発注を細かくするということですかねぇ」
「でも,配送トラックが道路渋滞を招き,窒素酸化物をばらまいて地球温暖化を加速させている,と批判されているし」
商品廃棄損には万引きも含まれていますから,問題はもっと複雑だと思いますよ。


→「ITを経営に役立てるコスト管理入門」の一覧へ

■高田 直芳 (たかだ なおよし)

【略歴】
 公認会計士。某都市銀行から某監査法人を経て,現在,栃木県小山市で高田公認会計士税理士事務所と,CPA Factory Co.,Ltd.を経営。

【著書】
 「明快!経営分析バイブル」(講談社),「連結キャッシュフロー会計・最短マスターマニュアル」「株式公開・最短実現マニュアル」(共に明日香出版社),「[決定版]ほんとうにわかる経営分析」「[決定版]ほんとうにわかる管理会計&戦略会計」(共にPHP研究所)など。

【ホームページ】
事務所のホームページ「麦わら坊の会計雑学講座」
http://www2s.biglobe.ne.jp/~njtakada/

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