■中小ソフトハウスの経営者・経営陣の皆様に成長の壁を突破する方法をお話する第5回目。ビジョンを実現するために意識すべき社員のレベルと組織の作り方について、お話したいと思います。

(長島 淳治=船井総合研究所 戦略コンサルティング部)



経営理念とビジョンが形なったら、次にそれを支える社員と組織について考える必要があります。ところが、年商3億円前後の会社では、この人と組織についての考え方が、分かっていないことが多くあります。これでは、せっかく理念やビジョンが素晴らしくても、現場で実行されることはありません。

そこで今回は「5分で分かる人と組織の考え方」についてお届けします。

社員にもレベルがある

中小ソフトハウスの経営者とお話していると、人と組織の問題で悩んでいるということをよくお聞きします。その代表的な悩みがこちらです。

・なかなか社員が育ってくれない
・マネジャーの素質を持っている人材が少なくて
・自分で考えて行動する社員がいなくて
・精神的なタフさを持っていない社員が多くなってきた
・報酬だけで会社に不満を言う社員ばかりで

これは、自社の社員のことを知らない経営者が突き当たってしまう悩みです。船井総研では、社員にも4段階のレベルがあると考えています。これを知らなければ、自社の状態を正確に把握することができなくなります。

社員の4段階のレベルとは次の通りです。

第一段階 : イヤイヤ型人材層
第二段階 : まじめ型人材層
第三段階 : 考える型人財層
第四段階 : 長所伸展型人財層

簡単に説明します。まず第一段階の「イヤイヤ型人材」ですが、これは仕事をする目的が食べるためで仕方なく働く、といったレベルの社員です。少し厳しい言い方ですが、このレベルの社員は社会的常識や躾・マナーが全くできていない層です。仕事を教えることよりも、社会人としての常識や躾をしっかりと叩き込むことが必要になります。

第二段階の「まじめ型人材」ですが、このレベルの社員は会社のルールを守り、言われたことはまじめにこなす社員です。ただ、自分で考えて行動することは無く、会議でも意見を言うことはほとんどありません。私の感覚では、中小ソフト会社の社員で最も多い典型的なパターンが、このまじめ型人材だと思います。

第三段階は、自らの考えを表明し、その立場に応じて創意工夫できるレベルです。第四段階は自らの長所を生かして、新しいものを生み出すことができる人材レベルであり、このクラスになると、会社の環境やレベルが低ければ離職する傾向が強くなります。

このように同じように見える社員にも、社員のレベルによって組織上の対策が変わってくるのです。例えば、少し前にブームになった目標管理制度があります。これを「まじめ型」の社員ばかり組織に適応したとします。果たして成果は上がるでしょうか?

残念ながら全く機能せずに終るでしょう。「まじめ型」の社員は言われたことはまじめに実行します。しかし、自ら考えることが苦手なので、目標を設定することができません。結果的に年功序列的な評価となってしまい、社員のモチベーションには何の影響も及ぼせません。

組織を構成する時の考え方

実は社員のレベルに応じて、組織の構成する方法も変わってきます。ソフトハウスではよく、常駐先別の組織であったり、会社内での仲が良い、悪いで人事異動が発生したりしています。しかし大切なのは、会社の目的であるビジョン達成のために最適な組織をどう構成するかです。

そこで、社員のレベルに応じて意識する組織構成の基準をお話します。

第一段階 : トップ集中型組織
第二段階 : 適所適材型階層組織
第三段階 : 適材適所起業型組織
第四段階 : 適材総所自立一体型組織

第一段階では、トップがすべてを決定する形態が、最もうまくいきます。「イヤイヤ型」と「まじめ型」のみで構成されている組織形態です。

第二段階では、まずビジョン実現のための適所を考えます。そして、その場所に対してどの人材が最適かを考えます。また、責任と権限を委譲できる人に応じて、階層を意識します。この段階では、少なくとも幹部クラスが「考える型」の社員として育っている必要があります。

第三段階は人によって最適な場所を選びます。人にフォーカスを当てても組織が機能する段階です。この時にはなるべく責任と権限を委譲すると共に、階層は少なくします。社員のレベルで考えると、「まじめ型」「考える型」「長所伸展型」がバランス良く存在している状況です。

最後の第四段階では、人によって部門を創り出します。小さな組織体が自立しながら、会社のビジョンに対して一体化している状態です。

ソフトハウスからの相談を受ける中で多いのは、第二段階の組織に移行できずに苦しんでいるケースです。トップ集中型で組織を作ってきたので、階層型に移行する時にそれができず、結果的に第一段階に戻ってしまうのです。

しかし、この第一段階で通用するのは従業員30人前後までです。それ以上になると確率論的に「考える型」の社員が育ち、環境が整っていないため、その育った優秀な社員から離職していくことになります。

組織とは、社員のレベルに応じて環境を作るためにあります。自社の組織を再度考えてみて下さい。社員のレベルと組織構成を意識できていますか? 不都合があれば改善していくことで、組織が活性化していくことを実感できます。

次回は、『幹部社員とその役割』についてお話させていただきます。


著者プロフィール
1998年、桃山学院大学経営学部卒業。某大手SIerでの営業を経て、船井総合研究所に入社。以来、年商30億円未満のソフトハウスを専門にコンサルティング活動を行う。「経営者を元気にする」をモットーに経営計画作り、マーケティング支援、組織活性化のため全国を飛び回っている。毎週1回メルマガ『ソフトハウスのための幸福経営論』を発行。無料小冊子『ソフトハウスが元気になる30の法則!』も発刊。